プロ野球公式記録員に密着 ネット裏の1軍舞台夢見る日々

[ 2015年7月2日 12:00 ]

ファームの試合でスコアをつける宮内公式記録員

 野球は「数字のスポーツ」ともいわれる。プロ野球の世界に欠かすことができないのが、試合を見て、記録を付ける「公式記録員」だ。一般のファンにとってはなじみが薄い記録員の仕事ぶりに密着。裏側から野球界を支える若手、ベテランの2人を取材した。(鈴木 勝巳)

 朝から晩まで野球漬け。それが宮内利浩記録員の日常だ。1軍の試合で記録を付けた経験はまだない。選手でいえばファーム。仕事場は戸田に鎌ケ谷、西武第2…。まずはイースタン・リーグで、とにかく経験を積む。

 「自分の決めたジャッジが選手の成績や生活に関わる。やりがいはあります」。子供の頃から自らプレーする一方で、野球のルールに特に興味があった。大学卒業後、一度は一般企業に就職。しかし「野球に携わる仕事がしたい」との思いは消えず、そんな時に日本野球機構(NPB)の記録員募集を目にした。迷わず応募。今年で入局4年目を迎える。独身。野球漬けの日々は「全く苦にならないです」と笑う。

 イースタンが週に5試合前後。夜は1軍の試合を先輩記録員の横で見学する。さらに1軍の試合の補助…。宮内記録員は昨年だけで「2軍が110試合、見学したのが30~40試合ぐらいで、補助が20試合ぐらい」という。そんな記録員の席にあるのが「H(ヒット)」「E(エラー)」「Fc(フィルダースチョイス)」を表示するためのボタン。試合のスコアを付けながら、瞬時の判断でこれを押すのも記録員の大事な仕事だ。

 「今の判定は甘かったかな、エラーは厳しかったな、とか…。ベンチに戻る時に、こっちを見る選手もいますね。球団マネジャーに“なぜ?”と聞かれることもある。理由を答えられなくて、その後に気持ちが動揺してしまったこともあった」

 宮内記録員が常に心掛けていることは「平常心」。グラウンド状態から風の強さ、野手の守備位置、走者の足の速さ…。「状況を全て頭に入れて、極力ボールから目を離さないこと」。来季には、1軍での「出場」を目指している。「将来はノーヒットノーランとか完全試合、節目の試合…。記録員としてジャッジしてみたい」。ファンの目にも触れず、黙々と作業をこなす。そこにこそ、記録員の誇りがある。

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2015年7月2日のニュース