大瀬良 入寮で「木鶏」色紙持参 マエケン&野村らの出世部屋へ

[ 2014年1月10日 09:00 ]

恩師の九共大・仲里監督から贈られた「木鶏」の色紙を手にする大瀬良

 広島にドラフト1位で入団した大瀬良大地投手(22=九州共立大)ら新人5選手が9日、廿日市市にある大野寮に入った。前田健や野村らが巣立った出世部屋を割り当てられた即戦力右腕は、同大学野球部の仲里清監督(59)が「木鶏(もっけい)」と記した色紙を持参し、決意新た。今春限りでの退任が決まった恩師の言葉を胸に、木鶏のごとき最強の投手になることで恩返しを誓った。

 入寮に際し、報道陣から持参品を問われた大瀬良は開口一番、「寝巻きぐらい。荷物はきょう送ったので明日着く。ミスりました」とし、照れ笑いを浮かべた。そうは言っても、肌身離さず持ち込んだモノがある。恩師から贈られた色紙。「木鶏」の二文字が光る。

 「ずっとボクに掛けて下さっている言葉。出発前に色紙をいただいた。大事にして、これから頑張ろうと思います」

 木鶏とは中国の故事に由来する、強さを外に表さない最強の闘鶏のたとえ。昭和の大横綱・双葉山の連勝記録が69でストップした際、“われ、いまだ木鶏たりえず”と知人に打電したことでも知られる。右腕も、仲里監督から双葉山の逸話を教えられたという。

 「ボクはこれからの人間。双葉山関とは立場が違うけど、69連勝するような偉大な関取でも常に謙虚だった…と」

 偉業を成し遂げた不世出の横綱でさえ、極限まで強さを追求しようと努力する。大瀬良を「放っておいてもよく練習する子」と評する仲里監督。それは、プロの世界へ羽ばたく教え子への贈る言葉だ。奇(く)しくもこの日、春季リーグ限りでの勇退が大学から発表された。

 「5日前に聞いた。最初はビックリしました。4年間育ててもらい、感謝の気持ちしかない。プロでしっかり活躍することで、恩返ししたい」

 木鶏のごときプロ最強投手になるよう、去りゆく恩師に不断の努力を誓う右腕。格好の部屋も割り当てられた。前田健や野村…歴代のドラフト1位選手が入寮後の一時期を過ごした出世部屋、104号室がそれだ。

 「背番号が14で104号室。縁があるのかな。期待して下さっている思いが伝わる。前田健さんや野村さんのように、カープの柱になれるよう気を引き締めてやりたい」

 当初は遅れ気味だった調整も、1日7時間のハードトレで9割方仕上がったという。新人王の呼び声高い剛腕ルーキー。恩師の言葉を胸に刻み込み、きょう10日からの新人合同自主トレでプロ生活のスタートを切る。

 ▽いまだ木鶏たりえず 木鶏とは木彫りの軍鶏のことで、荘子に収められている故事に由来する。鍛え上げられた軍鶏が何事にも動じず、その威容だけで相手を射すくめてしまうさま。転じてどんな相手にも無心で戦える境地という意味。「いまだ―」は1939年の大相撲春場所で、連勝記録が69でストップした双葉山が取組後、知人に打電した言葉。

続きを表示

2014年1月10日のニュース