神様は必ず見てる…栗山監督 すべてをやり尽くし「運」を味方に

[ 2012年12月30日 12:29 ]

札幌ドーム監督室に飾られた三原脩氏の言葉

野球人 ヤクルト・栗山英樹(下)

 札幌ドームの監督室のホワイトボードには、5つの言葉と一緒にこう書き込まれている。

 「実力5 調子2 運3」

 これは尊敬する名将・三原脩監督の教えである。野球の勝負において必要な要素を数字で表したもので、中でも栗山監督は「運3」に着目した。「勝負では10のうち3も運が左右するということ。だから、三原さんは“ツキ”の研究までしたんだろうね。運を味方につけるために」

 かつて「魔術師」と呼ばれた名将のツキにまつわるエピソードは枚挙にいとまがない。西鉄(現西武)の監督時代、巨人に3連敗後4連勝した58年の日本シリーズ。3連敗で迎えた第4戦が雨で流れ、三原監督は麻雀をやった。「すると不思議に上がれてツキが巡ってきた」と後に語っているが、栗山監督は「三原さんはツキとか、流れを呼び込むためにわざと麻雀をやったんじゃないかと思う」。ただ黙って待っていても味方にできないのが「運」なのだ。

 確率を求めるのが栗山野球の基本。より確率を高めるために「できることをやり尽くそう」と選手に言ってきた。例えば1本のヒットを打つために、配球を読み、状況判断をし、あらゆる準備をし尽くす。そうすることで打てる確率が1分でも高まる。その積み重ねの先にあるのが1勝。しかし、そこまでしても負けるのが野球。「ただ」と栗山監督は言う。

 「野球の神様は必ず見てる。できることをやりきらないと間違いなくそっぽを向かれる」

 運とは、人知を超えたところにあるもの。人の意思や行動で左右できるものではない。でも、勝負のカギを3割も握る運を味方につけようと、全身全霊を込めて采配を振ってきた。グラウンドだけではない。北海道栗山町の「栗の樹ファーム」の野球場。真夏の炎天下でも草刈りを欠かさず、芝生がはげれば種をまいて肥料を入れた。まだ身長にも満たないアオダモの木の周りは入念に草をむしった。バットになるのは数十年後。それをしたら試合に勝てるなんて思ってない。でも、やらずにいられなかった。「監督とは人のために尽くす仕事と思うから」

 糸井の復活劇も、CSファイナルSの送りバント後の同点アーチも誰も予想などできない。栗山監督は「運が味方してくれたとは思うけど、味方につけられたとは思ってない」と言った。まさに人知を超えた結末だ。ただ、できることをやり尽くしたからこそ、天命は届いたのだろう。

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2012年12月30日のニュース