2階級特進へ巨人・隠善猛烈アピール

[ 2008年3月4日 06:00 ]

<巨人・オリックス>5回2死二塁、隠善は左線にタイムリー二塁打を放つ

 【巨人3―2オリックス】もう「誰だ?」なんて言わせない!巨人の育成選手・隠善(いんぜん)智也外野手(23)が3日、オリックスとのオープン戦(宇部)で2試合連続の適時打と決勝点につながる犠打を決めた。オープン戦打率5割と好調の背番号107は支配下登録を引き寄せるどころか、開幕1軍も視界にとらえた。ラミレスらの加入で巨大戦力となったチームの中、推定年俸240万円の苦労人が“2階級特進”を目指す。

 試合前、宇部市野球場の客席から声が聞こえた。「誰?」。背番号は育成選手を意味する3ケタの「107」。周囲と比べて身長1メートル74は小柄だ。「ちょっとショックです」と苦笑していた男が、試合後のバスに乗り込む時だ。取り巻いたファンの数人が声を張り上げた。「隠善!」。23歳の“雑草”がグラウンドで存在を示した証だった。
 「2番・左翼」で先発出場。最初の2打席は凡退したが、5回2死二塁ではカウント1―2から外角球を左翼線に流し、一時は勝ち越しとなる適時二塁打を放った。「終わったこと(凡退した打席)は反省し、気持ちを切り替えて打った」。さらに同点の8回は無死二塁から一塁線にキッチリと犠打を成功。続く矢野の遊ゴロ失策の間に三塁走者が生還し、オープン戦4試合目での初勝利に大きく貢献した。
 昨秋キャンプで打撃センスが首脳陣の目に留まった。支配下登録を期待して契約更改交渉に臨んだが、結果は育成枠での現状維持。悔しさをバネに今キャンプの紅白戦では好守巧打を連発した。2月19日の紅白戦では左翼後方の大飛球をフェンスに激突しながら好捕。その際に右足首を捻挫したが「僕はこの時期しかチャンスがない」と翌日からテーピングを何重にも巻いて練習を続けた。
 練習試合を含めた計5試合は12打数6安打、打率5割で、原監督も「いい戦いをしている」と連日の高評価。順調なら開幕前の3月下旬にも支配下登録される可能性が高い。巨人では4人目の育成からの出世となるが、隠善は「キャンプ中は背番号を2ケタにするのが目標だった。今は開幕1軍に入りたい」と目標を“上方修正”している。
 ラミレス、グライシンガー、クルーンを獲得し、大型補強ばかりに注目が集まる巨人。今季の支配下登録選手の平均年俸も7750万円(推定)で12球団断トツだ。これに対して隠善の年俸は1ケタ違う240万円。チーム最高年俸である李スンヨプの6億円を日割り換算すると約164万円で、その1・5日分にすぎない。隠善は巨大戦力に埋もれていた“ダイヤの原石”といえる。
 あこがれは世界の本塁打王・ソフトバンクの王貞治監督(67)だ。「同じ左打者として理想。まだ僕なんてフォームを参考にもできないですけど」。体は小さいが、誰よりも大きな背番号には無限の可能性が広がる。4日は地元での広島戦に臨む。“育成の星”は高校時代の恩師らの前でも輝きを見せる。

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2008年3月4日のニュース