山県、今季日本最高10秒08 追い風味方にリオ参加標準突破
陸上東日本実業団選手権第1日
(5月21日 埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)
男子100メートル準決勝で追い風2・0メートルの中、山県亮太(23=セイコーホールディングス)が、リオデジャネイロ五輪の参加標準記録(10秒16)を破る10秒08の今季日本最高をマークした。決勝でも向かい風0・6メートルで10秒12と好タイムをそろえて優勝。予選でもケンブリッジ飛鳥(22=ドーム)が追い風0・7メートルで10秒10でリオ参加標準を突破し、10秒01の記録を持つ桐生祥秀(20=東洋大)らを含めた、日本最速&9秒台争いが激しくなってきた。
絶好のチャンスは逃さない。この日の予選まで4レース連続で向かい風に阻まれた山県が、準決勝で公認ギリギリ2・0メートルの追い風に乗った。自己2番目の10秒08は、リオ五輪の参加標準記録も突破。「感触は悪くなかったし、こんなものかな。落ち着いてしっかり走れた。ホッとした」と静かに喜びをかみしめた。
予選からリオ参加標準を狙ったが、10秒26止まり。後の組で走ったケンブリッジが10秒10の好タイムをマークした。「情けないと思ったし、凄いとも思った」。複雑な心境のまま、1時間50分後の準決勝に向け自身の予選の映像をチェック。8日のゴールデングランプリ川崎で失敗したスタートが慎重になっていることに気づくと、準決勝では号砲と同時に力を込めた。
自己ベストは12年ロンドン五輪の10秒07。この日の10秒08は、同年織田記念国際の予選と並ぶ。タイムは同じでも、当時とは手応えがまったく違う。「確実に、4年前よりも成長を実感できている」。12年織田の決勝は無風で10秒16だったが、この日は決勝で向かい風0・6メートルの中、10秒12と好タイムをそろえた。
昨夏からプロゴルファーの石川遼を指導した実績を持つ仲田健トレーナーに師事し、冬季はでん部周りを重点的に強化。「走りが安定した。土台がしっかりしている感覚はある」。昨季まで愛用していたジーンズがはけないほど、下半身はビルドアップ。故障が多かった過去と決別し、1日3本走っても「走りがダメな時は疲れるけど、きょうは心地よい疲労感」と爽やかに笑った。
6月5日には布施スプリント(鳥取)で桐生、サニブラウンと激突する。同大会はホームストレートが向かい風の場合、バックストレートを使用して追い風で走ることが可能。「狙うのはタイム。9秒台を目指して、世界で戦えるスタートラインに立ちたい」。日本陸上界の夢は、ついに現実に変わる。
▼男子100メートルのリオへの道 国際陸連(IAAF)の定める参加標準記録(10秒16)を15年5月1日~16年7月11日の期間に突破していれば、最大3人まで出場できる。日本陸連が独自の設定記録(10秒01)を突破し、6月の日本選手権8位以内の中で最上位に入るか、参加標準を切り、日本選手権で優勝すれば決まる。他は日本選手権の上位選手らから選出される。
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