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お家芸見事に復活!ソチで金に期待

[ 2010年2月17日 06:00 ]

スピードスケート男子500Mで銅メダルを獲得した加藤条治は、橋本聖子団長に「帰国便はビジネスクラスでお願いします」と笑顔

 男子500メートルで、長島圭一郎(27)が銀、加藤条治(25=ともに日本電産サンキョー)が銅と2つのメダルを獲得したスピードスケート日本代表。メダルなしに終わったトリノ五輪の屈辱をバネに積み重ねてきた強化策がついに結実した。日本のお家芸が見事に復活を遂げたことで、ソチ五輪では金メダル奪回に期待がかかる。

 日本の男子500メートルで初めて金メダルを狙える存在として注目された元世界記録保持者の鈴木恵一スピードスケート総監督は、お家芸復活を心から喜んだ。「トリノでの惨敗が頭の中から離れなかった。2個とは夢にも思わなかった」

 鈴木総監督は初出場の64年インスブルック大会は5位、68年グルノーブル大会も8位と五輪の壁にはね返された。だが、84年サラエボ大会で北沢欣浩が日本スケート界に初の五輪メダル(銀)をもたらすと、日本の栄光の時代がスタート。その後も黒岩彰、黒岩敏幸、井上純一、堀井学がメダルを獲得し、98年長野大会では清水がついに悲願の金メダル。02年ソルトレークシティー大会でも2大会連続のメダルとなる銀メダルを獲得した。

 日本人にとって500メートルは体の小ささを生かしたコーナリング技術で勝負できる格好の舞台だった。世界と勝負できる先人たちの後を追うように、若き才能が次々に競技に参戦。練習方法は脈々と受け継がれ、さらに先輩メダリストに追いつけ追い越せと、新しい技術の研究も進んだ。黒岩彰氏は「探求心、研究心という名の伝統が生かされていた」と振り返る。

 だが、トリノ大会は新エース加藤が6位、及川が4位、清水は18位と惨敗。メダル獲得の歴史に、ついに空白が生じた。これを受け、強化部長を務める鈴木総監督は「代表チーム」の強化に着手。海外ではナショナルチーム体制を敷き、年間を通じて少数精鋭で強化する国が多いが、日本は実業団、大学など各所属が強化の中心。だが、トリノ五輪以降はオフシーズンも合同合宿の機会を増やした。チームとしての一体感を生みだし、切磋琢磨する環境を整えた。選手、コーチ間の風通しも良くなった。

 投資も大きかった。バンクーバーには事前の情報収集と期間中の前線基地のために、半年前から会場近くに部屋を借りてサポートハウスを作った。そこで選手の練習の映像を解析した。その費用は1000万円超。トリノの3倍以上だった。

 「お家芸復活と言っていいでしょう」と黒岩彰氏。4年後のソチ五輪で長島は31歳、加藤は29歳。アルベールビル五輪の女子1500メートルで銅メダルを獲得した日本選手団の橋本団長は「彼ら2人はこれで満足してはいけない。4年後に金メダルの目標を残してよかったね、と言った」という。鈴木恵一―黒岩彰―清水宏保と受け継がれた伝統は、ようやく長島、加藤へとバトンタッチ。その先には、清水以来の金メダルという新たな野望が待っている。

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2010年2月17日のニュース