×

【登場が噂されるジムニー5ドア! ライバルはこれだ】②三菱トライトン:日常生活からアドベンチャーまでカバーするハイテクピックアップ

[ 2024年5月4日 12:00 ]

三菱トライトンとスズキ・ジムニー5ドアの違い

1.5Lエンジンを搭載するスズキ・ジムニー 5ドア。全長3985×全幅1645×全高1720mm(インド仕様)。

スズキ ジムニー5ドアは、高い悪路走破性を誇るジムニーのボディを延長して後席の快適性と荷室空間を向上させた小型のSUV。2024年に2月に日本でも発売された三菱・トライトンは全長5mを超える大型の5人乗りダブルキャブのピックアップトラックだ。

SUVとピックアップトラックは求められる性能がよく似ている。そのため自ずと車体構成も似てくる。

両車はボディサイズが大きく違うため搭載されるエンジンの排気量に大きな差があるものの、悪路走行時の荷重に耐える強靭なラダーフレームのシャシーをベースに、不整地での駆動を確保するための4WDが組み合わされる点は同じだ。

2.5Lディーゼルエンジンを搭載するトライトン。ボディサイズは全長5360×全幅1930×全高1815mm。

ただし、ワゴンボディとオープンデッキというボディ形状の違いから車体下回りの設計がやや異なる。特にトライトンは後方へ伸びる荷台の長さが際立っている。

悪路の走行においてはこうした車体の形状が重要で、ボディの下回りが路面に干渉してしまってはどれだけ高い駆動性能が備わっていてもスタックを起こしてしまう。

以上のような違いはトライトンとジムニー5ドアの悪路走破性能にどのような違いをもたらすか比較してみる。

対地障害角からトライトンとジムニー5ドアとオフロード性能を比較

ジムニー5ドアの対地障害角図。3ドアのジムニーシエラに比べてランプブレークオーバーアングルが小さくなっている。

車体下回りの形状が悪路走破性におよぼす影響は「対地障害角」と呼ばれる以下の3つの数値で表される。

  • アプローチアングル:
    前輪の接地点とフロントバンパーの下面先端を結んだ線の対地角度
  • デパーチャーアングル:
    後輪の接地点とリアバンパーの下面先端を結んだ線の対地角度
  • ランプブレークオーバーアングル:
    前後輪それぞれの接地点とホイールベースの中心を結んだ線が交差する角度

アプローチアングルとデパーチャーアングルが大きいほど、平地から急傾斜を差し掛かる際、あるいは急傾斜から平地へ差し掛かる際にバンパーが地面に干渉しづらい。ランプブレークオーバーアングルが大きいほど凸部を乗り越える際にボディが腹づきしにくくなる。

「3アングル」とも呼ばれるこれらの数値は、車体全長とホイールベース、最低地上高の寸法に加え、バンパー形状などによっても左右される。両車の対地障害角を含むスペックは以下のようになる。

スペック/車名 ジムニーシエラ(参考) ジムニー5ドア トライトン
アプローチアングル 36° 36° 29.0〜30.4°
デパーチャーアングル 47° 47° 22.8°
ランプブレークオーバーアングル 28° 24° 23.4°
最低地上高 210mm 210mm 220mm
ホイールベース 2250mm 2590mm 3130mm

トライトンとジムニー5ドアのアプローチアングルとランプブレークオーバーアングルを比較すると、その差はわずかだ。ただし同程度の対地障害角であっても、最低地上高やホールベースの値は大きく異なる。

ホイールベースが長いほど起伏のある場所で腹づきしやすくなる。その反面、起伏が大きい場所でも車体の前後傾斜角が抑えられるため恐怖を感じづらい。

ジムニー5ドアはホイールベースだけが延長されたことで3ドアのジムニーシエラよりもスタックしやすくなったと言えるが、同じ傾斜を走行しても車体姿勢がよりフラットに保たれる。

ジムニー5ドアは、ジムニーシエラよりもホイールベースが延長されることで悪路でもよりフラットな姿勢が保たれる。

それよりさらにホイールベースが長いトライトンはさらに角度変化が少ない。加えて車高が高いトライトンのほうが悪路走行時の安心感は高いと言えるだろう。両車が大きく異なるのは、車体後端のデパーチャーアングルだ。

トライトンは、車体後方に長く伸びた荷台部分のオーバーハングによって、どうしてもデパーチャーアングルが小さくなってしまう。そのため急傾斜に進入する際はフロントがクリアできても、リアオーバーハング部分が地面に干渉して走行が妨げられる恐れがある。

デパーチャーアングルに劣るピックアップトラックであっても、この程度の凹凸なら難なくクリアする。

特にモーグル地形のような下りから上りへつながるような凹部や岩場の走行時は、この数値を簡単に超えてボディが地面に干渉する危険が高まる。とはいえ、デパーチャーアングルが22.8度もあれば、よほどの悪路でなければ困ることはないだろう。

それ以上に、悪路走行時はトライトンの大きなボディがボトルネックになる。ボディの大きさはオフロード走行時の安心感は高まるものの、それだけコントロールにも気を遣うことになる。

対地障害角ではジムニー5ドアが有利だがトライトンも負けない

トライトンはシフトレバー後方のセレクトダイヤルで、走行モードをいつでも変えられる。

単純な対地障害角の比較ではジムニー5ドアのほうが優れる。しかし、駆動系を含めた絶対的な動力性能や機能ではトライトンのほうが圧倒的に勝る。

トライトンには7種のドライブモードが用意され走行状況に応じて最適な駆動制御が行われる。副減速機はもちろん、ブレーキLSD制御やリヤデフロックも標準で備わるうえ、傾斜で見えない車体下側をカメラで確認できる「マルチアラウンドモニターカメラ」などオフロード走行に必要な各種支援機能も充実している。

スズキ・ジムニーおよびシエラは、シフトレバーの後方にあるトランスファーレバーで駆動パターンを切り替える。

ジムニー5ドアにもヒルホールドコントロールやヒルディセントコントロール、ブレーキLSDなどの車両制御機能は備わるが、搭載される副減速機付きパートタイム4WDは必要に応じて操作レバーを切り替える必要があるなど、ほとんどの操作をドライバーが自分で判断して行わなければならない。

トライトンは日常からオフロードまで、ストレスフリーでこなしてくれるSUVとしても使用可能なピックアップトラックと言える。オフロード競技に用いるなら、良好な乗り心地と電子制御駆動制御の恩恵が受けられるフラットダート競技が本領と言えるだろう。

トライトンはフラットダート競技、ジムニー5ドアはクロスカントリー競技が本領となる。

対するジムニー5ドアは、ジムニーシエラのランプブレークオーバーアングルを犠牲にして後席の快適性や積載量を増加させたモデルだが、車体そのものが持つ悪路走破性能は依然として高い。

ただし性能を引き出すには相応の技量を要する。軽量コンパクトなボディと優れたシャシーの組み合わせでクロスカントリー競技に向くのはジムニーのほうだ。

クルマに何を求めるか、どんな場所を走行するか、どんな使い方をするかで両車の優劣は変わる。とはいえ、どちらもライバルとして高い競争力を持っており、魅力的なクルマであるのは確かだ。

「F1」特集記事

「角田裕毅」特集記事

2024年5月4日のニュース