天心 “三度目の正直”で初KO!相手の続行不可能に苦笑いの3連勝「まじか」
54・8キロ契約 8回戦 ○那須川天心《3回終了TKO》ルイス・ロブレス● ( 2024年1月23日 エディオンアリーナ大阪 )
東洋太平洋スーパーバンタム級6位の那須川天心(25=帝拳)がWBA、WBO世界バンタム級14位ルイス・ロブレス(25=メキシコ)を3回TKOで下し、ボクシング転向後3連勝を飾った。3回終了後にロブレスが右足首の痛みを訴え、一度もダウンを奪わないまま初のKO勝利となった。世界ランカーを圧倒し、今後はバンタム級でタイトルを目指す意向を明かした。
あっけない幕切れに苦笑いを浮かべるしかなかった。3回終了後、コーナーから立ち上がらないロブレスを傷一つない表情で見下ろした那須川は「まじか」とぼそり。「よっしゃ、KO!」と叫ぶと事態をのみ込めないファンからは笑い声も上がった。「足痛めたって…キックの試合みたい」と苦笑しながら「TKOなので“とりあえずKO”ってことで。やりたいことはたくさんあったが、進化している姿を見せられた。次はTを抜いてKOでいきたい」。“三度目の正直”を果たし、大声援に両手を上げて応えた。
世界ランカーの戦意を喪失させる“KOスタイル”への変貌だった。立ち上がりから右ジャブ、左ボディーを次々にヒットさせると、3回途中から「L字ガード」に切り替え、じりじりと相手をロープに追い詰めると左ボディーアッパーで相手の動きを止めた。キック時代から含めて自身最軽量で挑んだ一戦で攻撃型への華麗なる転身を遂げた。
昨年1月のボクシング転向正式表明から約1年。4月のデビュー戦、同9月の2戦目ではともにダウンを奪う完勝もKO勝利を逃した。「KOする詐欺をやめたい」と10日の公開練習ではこの試合への決意を口にしていた。前戦の試合中に骨折した左拳の約2カ月のリハビリ期間で「倒すため」のステップや右手の強化にも取り組んだ。同11月には同門選手らと3度目のゴルフ場走り込み合宿。過去2回は常に最下位だったが、3度目は同等のペースで走りきるなど体力面でも進化していた。
周囲からKOを期待されるあまり重圧にも苦しんでいた。大阪入りの前、正月に那須川と顔を合わせた父・弘幸氏は愛息のわずかな変化を感じ取っていた。「これまでと比べて思い詰めているようにも見えた」。そんな父の不安を一蹴するかのような完勝に「詐欺撲滅ですね」と笑った。
「もちろん世界チャンピオンは意識するが、まずは何のベルトも持っていないので日本でも東洋でもチャレンジしたい」と年内にバンタム級(53・5キロ)でタイトルを狙うことを宣言。キックの“神童”がボクシング界で新たな才能を開花させた。
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