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かつて渋谷には“宮殿”があった――力道山、怒りの逆水平で“巨象”調教

[ 2020年5月3日 05:30 ]

1962年11月23日<力道山・吉村組対オルテガ・マハリック組>相手反則に怒った力道山がオルテガの胸板に水平空手チョップ=渋谷リキ・スポーツパレス
Photo By スポニチ

 【Lega-scene あの名場面が、よみがえる。~力道山編~】昭和、平成の名場面をスポニチ本紙秘蔵写真で振り返る「Lega―scene(レガシーン)」。力道山の代名詞が、屈強な外国人レスラーを打ち据える空手チョップでした。1962年(昭37)11月23日、東京・渋谷のリキ・スポーツパレスで行われたスポニチ後援大会でのタッグマッチ。“メキシコの巨象”と恐れられたジェス・オルテガの喉元に逆水平チョップを決める瞬間を捉えました。

「でっかい。こいつはすげえ――」
「大きい、大きいなあ」

1メートル93、145キロ。
横綱・大鵬よりも巨体のメキシコ系米国人が
花道に姿を見せただけで会場が沸いた。
オルテガはアート・マハリックと組み
吉村道明に弾丸パンチ、力道山にヘッドロックと
パワーを生かして大暴れ。
だが、力道山もオルテガの分厚い胸板に
空手チョップをぶち込んでピンチを脱出すると
極悪コンビの反則総攻撃にはバケツを持って応酬と
えげつなさでも負けていなかった。

力道山の空手チョップは相撲の張り手の応用。
相手の肩口や首へ斜めから叩きつけ
反撃の隙を与えない乱れ打ちで場内の興奮もあおった。
また、逆水平はロープに振り
戻ってきた相手の喉元や心臓へ打ち込む
とどめの技だった。
正統派のストロングスタイルもいけるが
キレると手がつけられず
ヒール相手の乱戦がむしろ似合った。
姿勢は常にデスマッチ。
手抜きした外国人レスラーは宿舎でも締め上げた。

相撲で鍛えられた肉体はケガに強く
出血もすぐに収まった。
流血戦を終えると同じ建物内で酒をあおった。
飲み干したグラスをバリバリとかみ砕き
口から血を垂らしながらそのままのみ込む姿は
目撃した作家・石原慎太郎を仰天させた。
(敬称略)

 ≪花嫁学校まであった総合施設≫試合会場のリキ・スポーツパレスは、力道山が「プロレスにも相撲の国技館のような常設会場が欲しい」と15億円を投じて61年に完成した。地上9階、地下1階で、3000人収容の試合会場のほかにサウナ、ジム、ボウリング場、レストランにバー、花嫁学校までが入った総合レジャービル。プロボクシングの興行も行われた。力道山は不動産などのビジネス展開にも精力的で、東京・赤坂で経営していた「リキマンション」は、今も壁面にイニシャルの「R」が描かれている。

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2020年5月3日のニュース