井上尚弥 右眼窩底骨折で「ドネアが2人に…」、想定外危機も勝利つかんだひらめきと冷静判断

[ 2019年11月11日 09:53 ]

取材に応じ右眼窩(がんか)底などを骨折していたことを公表した井上尚弥(右)と大橋会長
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 WBA&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(26=大橋)が、5階級制覇王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)と対戦したワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級トーナメント決勝で右眼窩(がんか)底など2カ所を骨折していたことを公表した。WBSS優勝の代償は大きかったが、ケガを抱えた状態で最後まで戦い抜いたことは、モンスターの凄さをさらに強調する形となった。

 骨折したのは第2ラウンド、左フックを浴びた場面。左フックはドネアの代名詞とも言える必殺ブローで、井上も十分に警戒していた。井上は「アッパーが来ると思った」と感じたそうで、普段とは角度が違うものだったようだ。これで右まぶたを切って流血。傷も試合後に5針縫う重傷だったが、それ以上に深刻だったのは「右目がぼやけてドネアが2人に見えた」こと。その状態のまま残りの10ラウンドを戦うことを余儀なくされる。

 井上は試合前の会見で「KOでも判定でも、どんな状況になっても対処できる準備はしたきた」と豪語。これまで1度も流血の試合はなかったが、「実はカットした時のこともイメージはしていた」という。ただ「さすがに目が二重に見える状態は想定していなかった」と打ち明けた。

 ボクシング人生最大とも言えるピンチに井上は右目を右グローブで隠し、左目だけで焦点を合わせることで対処した。実はこれはドネアが13年4月のギレルモ・リゴンドウ(キューバ)戦で同じような状況になった際に使った方法。「それが、とっさに思い浮かんだ」という。ただ、相手がドネアだけに状況を察する可能性もあったため、意図的に右目からグローブを外す場面もつくり、ドネア陣営に最後まで左フックに対するガードだと思わせることに成功した。

 もちろん、左目だけでは正確な距離感つかめない。抜群の“当て勘”を持つ井上のパンチがいつもようには当たらず、これまでなら、あり得ないような被弾も多くあった。ポイントアウトする戦術に切り替え、あえて「捨てるラウンド」もつくった。そして11回には強烈な左ボディーでダウンを奪った。“幻の10カウント”でKO勝利は逃したが、一瞬のひらめきと冷静な判断、そして戦術を確実に遂行する高い技術力で勝利をつかみとった。

 幸いにも骨折の程度は重いものではないようで、手術はせず、保存治療で経過を見る。1カ月後に再検査するが、医師からは「次戦に影響ないと言われた」という。井上は米大手プロモーター、トップランク社と契約し、来年は本格的に海外にも進出する。今は少しでも早い回復を願うばかりだ。

 なお、試合の模様はきょう11日午後9時からWOWOWライブ「エキサイトマッチ」で放送される。井上自身がゲスト出演し、ドネアとの激闘を本人の“解説”付きで振り返ることができる。(大内 辰祐)

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