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中谷正義、同級生の井岡一翔刺激に世界挑戦のチャンスつかむぞ

[ 2019年6月7日 00:06 ]

ミット打ちで打撃音を響かせる中谷(左)
Photo By スポニチ

 ボクシングの東洋太平洋ライト級王者で、IBF世界同級3位の中谷正義(30=井岡)が世界挑戦の機会を得る戦いへ順調に調整を進めている。

 7月19日(日本時間同20日)に米国メリーランド州オクソン・ヒルのMGMナショナル・ハーバーで行われるIBF世界同級の指名挑戦者決定戦に出場する。試合まで残り1カ月半。今月6日は大阪市浪速区の所属ジムで、トレーナーが構えるミットやサンドバッグを叩き、心地よい打撃音を響かせた。見守る井岡一法会長は「抜群ですよ」と目を細める。

 相手のテオフィモ・ロペス(21=米国)は13戦全勝11KOの右ボクサーファイター。同級世界ランクでIBF4位(1、2位は空位で中谷とロペスが最上位2人)をはじめ、WBA3位、WBC3位、WBO2位に入る若手有望株だ。1メートル73と大柄ではないが、筋肉質のがっしりした体つき。見た目どおりの攻撃的なスタイルで現在5連続KO勝利、全て7回までに決着をつけた。

 一方の中谷は18戦全勝12KO。この無敗対決は立ち上がりが重要だと肝に銘じている。「最初から凄くプレッシャーをかけてくると思う。1ラウンドが大事。自分は今まで以上に攻撃的なスタイルで、最初からカマして“勝つ気で来た”と相手に分からせたい」。目論見どおりの展開になればジャッジの支持につながるはずだ。

 大阪市淀川区出身で小3から空手、中3からアポロジムでボクシングを始めた。大阪・興国高では、のちの世界3階級制覇王者・井岡一翔(30=Reason大貴)と同級生。3年時の総体はライト級8強で団体優勝に貢献した。その井岡は日本男子初の世界4階級制覇を目指し、今月19日に千葉・幕張メッセでWBO世界スーパーフライ級王座決定戦に出場する。

 「自分たちが今いる場所は違うけど、どこかで同級生が頑張っているのはうれしい」

 中谷が近大を卒業し、井岡ジムからプロデビューしたのは2011年6月。その4カ月前に井岡はWBC世界ミニマム級王座を獲得していた。「シンプルに凄いと思う。若い時から世界戦のプレッシャーと闘い、それを乗り越えて世界を獲った。(自身の指名挑戦者決定戦が決まり)自分がプレッシャーを感じる状況になって、改めて(井岡は)凄いなと思った」。あれから8年が経過。目標はあくまで世界ベルトだ。その一歩手前、指名挑戦者決定戦で立ち止まるわけにはいかない。

 興国高ボクシング部監督の勧めで進んだ近大では予想もできない事態に直面した。2009年6月にボクシング部員2人が強盗事件を起こし、大学側から廃部処分を受け、練習場も失った。すぐにプロ転向した部員もいたが、当時3年生だった中谷は「卒業してからでも遅くない」と残留を決意。大阪市内のアマチュアジムで汗を流す一方で大学内などで“みそぎ”の清掃活動などに励んだ。

 「いろいろ経験して成長できた。社会に出れば、なかなか自分の思い通りにならないことに遭遇する。それを学生のうちに知ることができた。ボクシングで思い通りにならないことがあっても、自分の心をコントロールできる」

 2014年1月に獲得した東洋王座を実に11度も防衛。リミット61・2キロのライト級になれば世界的に選手層が厚く、世界挑戦の機会は簡単に巡ってこない。さまざまな経験を糧にした中谷は“辛抱する木に花は咲く”とばかりに30歳という年齢にも前向きに捉えている。元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏が2010年1月にタイトル獲得した際は30歳、元WBC世界バンタム級王者で12連続防衛した山中慎介氏が2011年11月にタイトル獲得した際は29歳だった。

 「内山さん、山中さんという凄いチャンピオンが先に結果を出している。だから自分も焦らずにやってこられた。2人ともプロフェッショナル。淡々とボクシングをするというか、技術で理詰めで倒しているのが凄い」

 指名挑戦者決定戦の相手は21歳、米国の若手有望株。中谷が年輪の違いを見せつけるのか、注目だ。

 ◆中谷 正義(なかたに・まさよし)1989年3月8日生まれ、大阪市出身の30歳。興国高―近大。アマ戦績は25勝7KO5敗。11年6月プロデビュー。14年1月に加藤善孝(角海老宝石)に12回判定勝ち、7戦目で東洋太平洋ライト級王座を獲得。18年12月にハリケーン風太(カシミ)に4回TKO勝ちして11度目の防衛に成功。1メートル82の右ボクサーファイター。

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