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「まさか世界で…」王者・小国以載が驚いた“日本人対決” 予想外の展開と結末に期待

[ 2017年9月7日 14:20 ]

小国以載
Photo By スポニチ

 ボクシングの世界タイトルマッチで日本人対決といえば、かつては実現が待望され、実際に決まると一般的にも大きな話題を呼んだ。古くは小林弘―沼田義明や、薬師寺保栄―辰吉丈一郎がファンを熱狂させた。少し前なら畑山隆則―坂本博之なども一定の注目を集めていたように思う。

 しかし、最近では一般に名前を知られている世界王者が減った上に、日本人対決も珍しくなくなったため、ほとんど話題にならない。むしろ熱心なファンからは「また日本人同士か」と歓迎しない声も聞かれる。ライトフライ級やフライ級のように同じ階級に日本人世界王者が複数いて、王座統一戦を行うのならともかく、通常の防衛戦なら「本来、国内で決着をつけるべき対戦を、わざわざ世界の舞台で見たくない」というわけだ。確かに、レベルが伴わない試合内容では日本タイトルマッチを見ているような気分になる。

 日本人対決にはチケット販売や宣伝など興行的なメリットがあり、海外から選手を呼ぶ費用もかからない。王者サイドだけでなく、挑戦する側も比較的楽に世界戦を迎えることができる。だが、やはり世界挑戦は日本王座や東洋太平洋王座の防衛を重ね、ふさわしい実力を備えてからが望ましい。世界王座を狙える団体が4つに増え、特に軽量級の世界ランキングには日本人が多く名を連ねる。その世界ランクを獲得したからといって安易に世界挑戦へ直行するのではなく、世界を狙う日本人同士で挑戦権を懸けて戦い、勝者が世界へ向かう方がハイレベルの競争になり、ファンをひきつける。「史上最大の日本タイトルマッチ」と呼ばれ、テレビ生中継もされた1998年の畑山―コウジ有沢がいい例だ。

 13日にエディオンアリーナ大阪で行われるIBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチは、王者・小国以載が初防衛戦で岩佐亮佑を迎える日本人対決となった。高校時代に戦った経験があり(岩佐が勝利)、スパーリングでも何度も拳を交えた2人だが、この対戦は安易に組まれたものではない。小国は絶対不利の予想を覆し、全KO勝ちの前王者グスマンを倒しての戴冠だし、岩佐は挑戦者決定戦が相手の体重超過で中止となるハプニングの末、小国―グスマンの勝者への指名挑戦者に選ばれた。可能性が低いと思われた対戦が世界戦で実現し、「アマでやった中で一番嫌いな相手と、まさか世界でやるのは凄い」と小国が驚くのも分かる。

 個人的に最近の日本人対決で一番楽しみなカードだが、小国を担当する阿部弘幸トレーナーが言うように「玄人好みの展開」になりそうなのが惜しい。小国は派手に倒すタイプではなく、グスマン戦のように理詰めで相手を崩していく戦い方が真骨頂。岩佐もスタイルはカウンターパンチャーで、小国とは一般受けするような派手な内容ではなく、読み合いと駆け引き中心の試合が予想される。岩佐が小国の計算を狂わせるほど思い切って仕掛け、「日本人対決はやっぱり面白い」と言われるような予想外の展開と結末を期待したいのだが。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年9月7日のニュース