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興毅 流血、ダウン…フラフラV8、敵地は大ブーイング

[ 2013年11月20日 05:30 ]

5回、孫正五(左)のパンチを食らう亀田興毅

WBA世界バンタム級タイトルマッチ ○亀田興毅 判定 孫正五●

(11月19日 韓国・済州島)
 大ブーイングを浴びながら興毅がどうにか防衛した。敵地の韓国・済州島に乗り込んだWBA世界バンタム級王者の亀田興毅(27=亀田)は同級14位の挑戦者、孫正五(32=韓国)を2―1判定で下し、8連続防衛に成功した。日本人歴代2位タイとなる世界戦12勝目、4人目の海外防衛成功を成し遂げたが、自身初の世界戦だった06年8月のランダエタ(ベネズエラ)戦以来プロ2度目のダウンを喫するなど大苦戦した。

 疲れ切った肉体に会場を包むブーイングが突き刺さった。韓国語で亀田の勝利がアナウンスされると、観客から抗議の声。それどころか日本語でも「負けだろ、やめちまえ」の罵声が響いた。採点をめぐる協議時間の長さも異例。消化不良の一戦のジャッジは2―1で、興毅を支持した1人はわずか0・5点差の薄氷を踏む勝利だった。

 インタビューも、まるで敗者のように声は小さく目はうつろ。「う~んていう感じやね。コンディションは良かったけれど、リングに上がってパリッとしなかった。これも含めて実力です」。一歩間違えれば敗れていたかもしれない。力不足を誰よりも本人が痛感していた。

 いつもは慎重な興毅が熱くなった。「ソンジョンオ」コールの大合唱。孫がパンチを繰り出すたびに、軽い当たりでも会場は沸いた。約1年のブランクがある32歳のコリアンファイターは調子に乗ってどんどん前に出てくる。「普通にジャブを当てて、距離を取ればパンチをもらうはずはないのに、焦ってしまった。泥仕合に付き合わされた。どんどん泥沼にはまっていった」。8回には左目横、9回には右目上を切って出血。アウェー独特の雰囲気にペースを乱された。

 10回、絶体絶命のピンチに陥った。左フックを浴びると、バランスを崩し左膝をついた。7年ぶりプロ2度目のダウンを喫した。10回を終えてのジャッジは1―2で孫を支持していた。だが、ラスト2ラウンドで積極的に前に出て手数を出してポイントを稼いだ。何とか勝利を拾った。

 3兄弟同時に世界王者となり「オヤジの夢」を成し遂げ、今回からは3兄弟の新たな夢「世界進出」を掲げてアジアに飛び出した。だが、会場は集客が見込めず1000人弱収容のホテル内のホールに変更。取材に来た地元メディアは数人のみ。この内容では「亀田の名前を世界に広める」ことなど望みようもない。日本で「4人目の海外防衛」「歴代4位タイの8連続防衛」という記録こそ打ち立てたが、記憶に残るような戦いは見せられなかった。

 次戦はWBAから統一戦指令が出ているスーパー王者アンセルモ・モレノ(パナマ)との対決か、1階級下げての4階級制覇へ進むのかに注目が集まっていたが、そのどちらも胸を張って答えられる状況にはない。「当面白紙です。プロで10年やったし、1回仕切り直して、ボクシングのこと全てを考え直さなアカン」。最後に出てきた言葉は、まるで敗者が今後について語るようだった。

 ▽ボクシングの判定 プロは10点満点の減点方式が主流で、ラウンドごとに互角なら10対10、一方が優勢の場合は10対9、どちらかにダウンがあれば10対8、2度のダウンかKOに近い状態なら10対7。最近ではジャッジはなるべく10対10とはせず、どちらが優勢か必ず振り分けることを求められる。また、PABA(パンアジアボクシング協会)など、微妙なラウンドについてはハーフポイント(9.5など)を採用する団体もある。今回はジャッジ2人が「9.5」を計7回つけているが全て「9」に置き換えても勝敗は変わらない。

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2013年11月20日のニュース