【内田雅也の追球】「毎日選手」の陰で「育成」

[ 2025年8月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5-4中日 ( 2025年8月19日    京セラD )

<神・中(16)>6回、中川は送りバントを決める (中央) (撮影・奥 調)
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 大リーグには「エブリデー・プレーヤー」という言い方がある。直訳通り、「毎日、試合に出る選手」という意味だ。投手ではなく野手に使われる。ファンが楽しみにする人気選手で、スターの条件となっている。

 今季の阪神は他球団に比べ、「毎日選手」が多い。1~5番は固定され、皆すでにシーズン規定打席に達している。

 その一角、近本光司が先発メンバーから外れ、最後まで出番はなかった。いわゆる積極的休養だったと見える。

 監督・藤川球児は「長く現役を第一線で続けていくという部分では、ファンの皆さんにもそれを受け入れていただきながら」と話した。古い話で言えばON(王貞治、長嶋茂雄)が「今日しか見に来られない方がいる」と毎日試合に出続けた姿勢が美談として残る。大リーグでも「鉄人」カル・リプケンの連続試合出場がたたえられる一方、故障を未然に防ぐ休養は理解されている。

 夏の長期ロードの終盤、足に負担のかかる人工芝球場続き……といった疲労に配慮し、藤川は「雨が降る前に傘をさす」と手を打ったのだ。

 代わって中堅手で起用したのが井坪陽生だった。関東第一高から入団のプロ3年目、弱冠20歳だった。初の1軍昇格、デビュー戦だった。

 毎年、そして毎日が戦いの連続のプロ野球では勝利と育成の両立は最大のテーマである。常勝チームをつくるには戦いながら育てる必要がある。そして育てるためには、戦いの場を踏ませる経験が必要になる。

 近本休養での井坪抜てきには育成の意味があったろう。ただ、藤川は「グラウンドに出たら、1軍は育成の場ではない」が譲れぬ基本姿勢である。勝利が大前提なのだ。

 井坪はプロ初打席がボテボテの三ゴロだったが内野安打となった。好機で迎えた3打席目、さらに4打席目ももらえ、フル出場した。勝利の瞬間に立ち会えて、これ以上ない経験を積めた。

 育成が進めば「毎日選手」に近づく。9試合目先発の中川勇斗は2打席連続三振の後、3―3同点の6回裏無死一塁でも打席がもらえた。そして送りバントを初球で決めた。これが決勝点につながった。いわゆるスインガーだが、小技もできれば出場機会も増えよう。

 育てるには年月がいる。「待つ」時間である。藤川は勝ちながら待つことができている。 =敬称略=
 (編集委員)

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