【内田雅也の追球】「虎の子」を生んだ疾走

[ 2025年4月7日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1―0巨人 ( 2025年4月6日    東京D )

<巨・神>4回、一塁へ全力疾走する大山(撮影・木村 揚輔) 
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 阪神はまさに「虎の子」の1点を守り抜いた。好機は4回表の1度きり。残る8イニングで1安打、7イニングは三者凡退という内容だった。

 「今日は押し出しの1点だった」と試合後、監督・藤川球児は言った。「それで決まるほど甘くはない。そこはラッキーだった」。低調だった打線に気を引き締めた。

 ただ、藤川自身が就任時から繰り返す「凡事徹底」はできていた。ボール球を振らない、打ったら全力疾走する。当たり前のことを当たり前にやっていたのは確かだ。

 巨人先発の左腕・石川達也は独特のスクリューボール、チェンジアップの使い手で3回まで1人の走者も出せなかった。

 2巡目の4回表。1死から中野拓夢、2死から森下翔太がともにフルカウントから選んで四球、一、二塁と好機を得た。

 大山悠輔は外角低めチェンジアップを続けて空振りして追い込まれた。3球目も同じ球だった。食らいついた打球は遊撃左へのゴロとなった。

 大山は懸命に走った。やや肩をいからせ、鬼の形相で力走する姿はいつも通りだ。遊撃手・門脇誠は逆シングルで追いついたが、一塁送球をあきらめた。チーム初安打の内野安打で満塁とした。

 前川右京を迎えた石川は変調していた。3連続ボールの後、1つストライクが入ったが、はっきり分かるボールで四球、押し出しとなったのだ。

 藤川は「走塁に非常に力を入れていますから。動こうか、動かないのか(相手投手が)じりじりなったのかもわからない」と話した。塁上の走者たちがリードや偽走で揺さぶっていた。

 石川が与えた四球はこの回の3個だけ。2個は際どい選球だったが、押し出しの1個は明らかなボール球ばかりだった。投手は突然崩れることがよくあるが、原因を突き止めるのは難しい。

 石川は疾走する大山に気迫を見たのかもしれない。「走姿顕心」(そうしけんしん)と当欄で幾度も書いてきた。走る姿に心が顕(あらわ)れる。駅伝の名門、小林高(宮崎)の外山方圀に同名の著書があり、「凡事徹底」の著書がある会社経営者・鍵山秀三郎も引用している。鍵山は打算や損得で考えず、自分のなすべきことをする、せずにおれない人を「本物人間」と呼んでいた。

 大山である。その姿勢を他の選手もまねる。そんな心の鑑(かがみ)でもある。 =敬称略= (編集委員)

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