パラ競泳・山口尚秀 初出場で世界新金メダル 名前の由来はマラソン・Qちゃんとゴジラ松井

[ 2021年8月30日 05:30 ]

東京パラリンピック第6日・競泳男子100メートル平泳ぎ(知的障がい) ( 2021年8月29日    東京アクアティクスセンター )

競泳男子100メートル平泳ぎで金メダルに輝いた山口(撮影・坂田 高浩)
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 男子100メートル平泳ぎ(知的障がい)は19年世界選手権覇者の山口尚秀(20=四国ガス)が自身の世界記録を0秒23更新し、1分3秒77で金メダルを獲得した。競泳陣の金メダルは男子100メートル自由形(運動機能障がいS4)の鈴木孝幸(34=ゴールドウイン)に続いて2個目となった。

 初出場とは思えない貫禄だった。山口は序盤からトップに立つと、競り合っていた隣のオーストラリア選手を終盤に突き放してフィニッシュ。電光掲示板を見つめながら「金メダルと世界記録、2つを達成できて良かった」と喜びに浸った。

 3歳で知的障がいを伴う自閉症と診断された。一つのことを根気強く続けられる半面、嫌なことからは逃避しがち。周囲との違いに葛藤し思春期の頃は「(障がい者)手帳のない人生になりたかった」と漏らしたこともあった。小学4年の頃から親しんだ水泳がそんな劣等感を和らげてくれた。

 コロナ禍ではプールに向かうことがつらい日もあった。それでも一日7キロの泳ぎ込みなどで力を伸ばし、昨年11月には約10カ月ぶりの公式記録会で自身の世界記録を更新。東京大会へ「世界一になるためには世界一の努力をしなければ」と並々ならぬ覚悟を口にし、筋力アップのために1日4食やプロテイン摂取を心掛けた。3キロ増の92キロと一回り大きくなった肉体が、4度目の世界新という結果に結びついた。

 「尚秀」の名は生まれた00年にシドニー五輪女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子氏と、当時プロ野球の巨人で活躍していた松井秀喜氏にちなんでいる。母・由美さんは「高橋さんは穏やかで優しく努力できる人。松井さんも人柄が良くて」という“人間力”から名付けたが、山口は導かれるようにアスリートとしての能力を育んだ。「パラリンピック金メダリストとして今後も良いパフォーマンスを出していければ」。両氏に見劣りしない勲章を勝ち取り、王者の自覚が強まった。

 ◇山口 尚秀(やまぐち・なおひで)2000年(平12)10月28日生まれ、愛媛県今治市出身の20歳。1歳から祖父母に歩行浴が可能な健康施設に連れられて自然と泳ぎを覚える。小学4年で障がい児を受け入れる水泳教室に参加。愛媛県立今治特別支援学校で本格的に競技に取り組み19年世界選手権100メートル平泳ぎに世界記録で優勝。19年4月から今治市役所でパート職員を務め、同年12月から四国ガスの社員。好物は地元産「ポンジュース」で海外遠征にも持参。1メートル87、92キロ。足は30センチ。

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