競泳“カツオ”松元克央は「やる男」 サボりも全力 少年時代から変わらぬ一本気な性格

[ 2021年7月13日 05:30 ]

19年世界選手権後に松元(右)の獲得した銀メダルを首からさげる平コーチ
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 【メダル候補の心技体】東京五輪開幕がいよいよ10日後に迫った。日本選手団の注目選手の「心」「技」「体」をひもとく、カウントダウン連載をスタートする。第1回は競泳男子200メートル自由形で金メダルを目指す松元克央(24=セントラルスポーツ)の「心」に焦点を当てる。名前の読みは「かつひろ」だが、愛称は「カツオ」。目標に向かってブレずに突き進む精神面の強さの源流をたどる。

 ハンガリーから帰国後に88年ソウル五輪100メートル背泳ぎ金メダルの鈴木大地を育てた鈴木陽二コーチ(71)への師事を願い出た。過酷な練習を課すことで知られる名伯楽。松元は初めてメニューを見た時「できるわけない」と投げやりになりかけたが「(師事は)自分で決めたこと」と腹をくくり、かつお節のように身を削る思いで練習に耐え続けた。小学生時代から社会人まで所属クラブが同じで2学年先輩の小日向一輝(26)は「カツオは17年の世界選手権あたりから目の色が変わり、急成長した。内面的にも大人になった」と証言する。

 順調に記録が伸び、19年世界選手権(韓国・光州)は200メートル自由形で銀。鈴木コーチへの信頼は揺るぎないものとなり「“この練習をこなせば金メダルを獲れる”というメニューをくれる。信じて耐えるだけ」と進む道は明確になった。

 元来、凝り性で研究熱心。東京五輪の金メダルにターゲットを定めてからは「暇さえあればフォームのことなどを考えている。夢にも出てくるので、寝る時も含めて水泳漬け」という生活を送っている。テレビゲームのマリオカートにはまった時期はYouTubeで世界王者のテクニックを分析。とことん追求しないと気が済まない性格も競技にプラスに働いた。

 19年世界選手権後、金町SC時代の恩師・平昌巳コーチ(64)と会食。「強くなるには練習で手を抜いてはダメ」と力説し「よく言うわ」と突っ込まれた。松元は「人って変われるんだなと思います」と実感を込める。根っこにある頑固さ、世界舞台での惨敗とメダル、鈴木コーチをはじめとする人との出会い。さまざまな要素が絡み合い、やらない、と決めたらやらない少年は、やる、と決めたらやる男に成長した。

《「カツオ」名付け親の金町SC・平コーチ》 金町スイミングクラブの総支配人を務める平昌巳コーチ(64)は「カツオ」の名付け親でもある。小学4、5年時に担当した約30人のグループの一人として松元を指導。当時はチーム内で各種目のタイムのランキング表を作成して、選手に配布していた。発奮を促すために下位選手の名前をいじることがあり、50メートル平泳ぎで最下位となった松元の名前が「かつおう」と読めることからランキング表に「松元カツオ」と記載。チーム内で好評で本人もまんざらではなかったため、定着した。新記録の時は「新カツオ」、終盤追い上げると「追いガツオ」などと名乗り、現在はレース後の取材で「今日は何ガツオ?」と聞かれ「○○ガツオ」と返すのが恒例。平コーチは「私が本人公認の名付け親。“ありがとうございます”と感謝されています」と笑った。

 ◆松元 克央(まつもと・かつひろ)1997年(平9)2月28日生まれ、福島県出身の24歳。千葉商大付高から明大を経て、19年にセントラルスポーツに入社した。17年に日本代表に初選出。19年世界選手権は200メートル自由形で銀。今年4月の日本選手権で出した日本記録1分44秒65は16年リオ五輪の金メダルと同タイム。愛称はカツオ。身長1メートル86、86キロ。

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