追悼連載~「コービー激動の41年」その57 予想もしなかった新監督の早期降板
2004年6月。フィル・ジャクソン監督が勇退したあと新たに指揮官となったのは、ロケッツで2度ファイナル制覇(1994、95年)を達成し、2000年シドニー五輪で米国代表を率いたルディー・トムジャノビッチだった。当時56歳。膀胱がんとの闘病歴があったとは言え、まだ老け込む年齢ではなかった。
大学とNBAでの選手としての実績はジャクソンを凌駕している。1967年にミシガン大に入学したトムジャノビッチは203センチのフォワードとしてプレー。大学時代はチームのリバウンド記録を塗り替え、オールアメリカにも選出された。1970年のドラフトでは全体2番目にサンディエゴ・ロケッツ(その後ヒューストンに移転)に指名されてNBA入り。過去のレイカーズの監督としては、ジェリー・ウエスト(1960年ドラフト全体2番目指名)に匹敵するエリートだった。だが“トムジャノビッチ政権”はあまりにも早く幕を閉じる。チームに残ったコービー・ブライアントにとっても思わぬ出来事だった。
2005年2月2日。トムジャノビッチ監督は正式に辞任。「1カ月前から体調が悪くなった。自分はエネルギッシュな人間だと思っていたが、そうではなくなってしまった」。会見に姿を見せた指揮官は、ロケッツで連覇を果たした時のような笑顔をのぞかせることはなかった。膀胱がんとの闘病などで、すでにかなりの体力を擦り減らしていたのかもしれない。ストレスのかかるNBAの監督業。真面目でかつ繊細な性格が災いして、労苦に耐えられない自分を許せなくなったような感じだった。
レイカーズはこの時点で24勝19敗。決して悪い成績ではなかったが、5年3000万ドルという高額契約を締結したトムジャノビッチ監督にとっては不本意な内容だったのかもしれない。なにより驚いたのはこのあと、監督代行としてレイカーズを率いることになったアシスタントコーチ(AC)のフランク・ハンブレン本人だった。当時57歳。ジャクソン前監督のスタッフの中でただ1人チームに残ったACだったが、まさか自分が監督になるとは思っていなかった。なにしろその2日前にトムジャノビッチと話したばかりで「彼は元気だったし、2人で一緒に笑っていたんだが…」と辞任のことなど寝耳に水。だから心の準備はできていなかった。
実際、トムジャノビッチ監督辞任後のレイカーズはコービー・ブライアントの故障離脱も加わって低迷。結局、ハンブレンは監督代行となって10勝29敗という成績しか残せなかった。ACとしてはファイナル制覇を7回(ブルズで2回、レイカーズで5回)経験しているのだが、彼は最後までNBAの監督としての力量は示せなかった。
レイカーズは2004~05年シーズンを34勝48敗で終了。最後は6連敗で幕を閉じ、西地区パシフィックではディビジョン最下位の5位だった。シャキール・オニールをトレードで放出し、新しい指揮官を迎えた始まったシーズンはまさに惨敗で終了。そして想定外だった新監督探しが再び始まったのである。
実はこのとき有力な後任候補がいた。それが当時、マイケル・ジョーダンの母校でもあるノースカロライナ大(UNC)を率いていたロイ・ウィリアムス監督(当時55歳)だった。この年の4月4日にNCAAトーナメントの決勝でイリノイ大を75―70で下して優勝。カンザス大から移ってきて2シーズン目で勝ち取った自身初王座だった。カンザス大時代の1992年にはAP通信の年間最優秀監督賞を受賞。だから新監督の選考に苦しんでいたレイカーズにとっては喉から手が出るほど欲しい人材だった。
そして同じUNC出身だったレイカーズのミッチ・カプチャクGMは非公式ながら熱心にウィリアムス監督を誘った。しかし断られること3回。「これはレイカーズのチーム記録だ」と同GMは苦笑しながら語ったが、母校の指揮官は最後まで頑として首をタテにはふらなかった。するともうそこにはあと1人しか候補がいなくなっていた。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
2020年4月13日のニュース
-
「霊長類最強女子」吉田沙保里さんがトレーニング動画公開 視聴者からは「まだメダル獲れるんじゃないか」
[ 2020年4月13日 21:58 ] レスリング
-
テコンドー オリパラ代表内定選手が五輪延期受けコメント 鈴木セルヒオ「必ず金メダルを」
[ 2020年4月13日 19:05 ] テコンドー
-
全柔連の新型コロナ感染者16人に 今後は収束か
[ 2020年4月13日 18:17 ] 柔道
-
ニューヨークの人気スポーツ・カメラマンが新型コロナ感染で死去 48歳
[ 2020年4月13日 17:43 ] スポーツ社会
-
相撲協会 検温、気道の状況など確認通達 変化あれば稽古休止、症状続けば報告求める
[ 2020年4月13日 17:04 ] 相撲
-
バドミントン代表、5月の強化合宿が中止に 緊急事態宣言など踏まえ
[ 2020年4月13日 17:03 ] バドミントン
-
クラスター化の全柔連 感染経路「特定は困難」
[ 2020年4月13日 13:19 ] 柔道
-
全柔連が常務理事会を延期 山下会長は初の声明で陳謝
[ 2020年4月13日 12:46 ] 柔道
-
女子ゴルフ「ほけんの窓口レディース」中止発表 開幕から11戦連続
[ 2020年4月13日 11:14 ] ゴルフ
-
ラグビー日本代表初の外国人主将“赤鬼”マコーミック氏 コロナ禍で必要なのは“日本人マインド”
[ 2020年4月13日 10:00 ] ラグビー
-
米ゴルフ界の“孔雀”が死去 PGAツアー通算20勝のダグ・サンダース氏 86歳
[ 2020年4月13日 09:16 ] ゴルフ
-
追悼連載~「コービー激動の41年」その57 予想もしなかった新監督の早期降板
[ 2020年4月13日 08:02 ] バスケット
-
女子やり投げ・北口、飛距離伸ばすテレワーク 東京五輪メダル候補“スマホ”で飛躍
[ 2020年4月13日 07:00 ] 陸上
-
五輪延期で100歳聖火ランナーに 武漢は従軍地、平和を伝える運命の巡り合わせ
[ 2020年4月13日 05:30 ] 五輪
-
全柔連、専務理事もコロナ陽性…感染者計12人、15日五輪代表問題審議に影響も
[ 2020年4月13日 05:30 ] 柔道
-
「勉強取り組もう」柔道トップ選手らがSNSで呼びかけ 羽賀、原沢、高藤らリレーツイート
[ 2020年4月13日 05:30 ] 柔道
-
相撲協会、ぶつかり稽古禁止令 濃厚接触回避へ各部屋に通達
[ 2020年4月13日 05:30 ] 相撲
-
また会場で!Bリーグ全36クラブ選手から激励メッセージ、YouTubeで動画公開
[ 2020年4月13日 05:30 ] バスケット
-
八村破ったサンズ・ブッカー「NBA2K20トーナメント」優勝
[ 2020年4月13日 05:30 ] バスケット
-
Sクライミング、来年世界選手権日程の変更なし
[ 2020年4月13日 05:30 ] スポーツクライミング
-
女子テニス・ロジャーズ杯、コロナ影響で来年へ延期発表
[ 2020年4月13日 05:30 ] テニス
-
卓球世界選手権 団体のみ開催も 国際連盟CEO構想
[ 2020年4月13日 05:30 ] 卓球
-
元ツール王者・コンタドール氏、赤十字寄付へ“疑惑”自転車競売
[ 2020年4月13日 05:30 ] 自転車
-
トライアスロン五輪王者、自宅で完走映像を生配信で寄付金
[ 2020年4月13日 05:30 ] トライアスロン
-
25歳NHL選手、脳出血で死亡 コロナ感染拡大防止で家族は病院入れず
[ 2020年4月13日 05:30 ] ホッケー