データで見る八村の第26戦 見えにくい部分にある「無形の財産」

[ 2020年2月4日 12:23 ]

ウォリアーズのグリーンをかわしてジャンプシュートを放つウィザーズの八村(AP)
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 ウィザーズの八村塁(21)が24試合ぶりに戦列に戻ってきた。西地区最下位のウォリアーズに負けてしまったのはいただけないが、次戦(7日)のマーベリクス戦では違う結果を出してほしいところだ。

 八村は26分出場して11得点と8リバウンド。フィールドゴール(FG)の成功は8本中5本で、出場時間帯のチームの得失点はマイナス4点だった。彼だけの成績を見ると物足らないかもしれない。今季は平均13・9得点を稼ぎ、オールスター・ウイークエンドに開催される「ライジング・スターズ(1年目と2年目の選手が対象)」のチーム・ワールドにも選出されているので、故障上がりとは言え、もっと数字を増やす能力が潜んでいるはずだ。

 バスケットボールにはIntangible(インタンジブル=無形の、ぼんやりとした、という意味)と呼ばれる各種スタッツでは表しにくい選手の貢献度がある。ウィザーズの場合、とくにオフェンスでこの見えにくい部分に最も絡んでいるのは間違いなく八村だ。

 ウォリアーズ戦でウィザーズのFG成功は83本中42本。成功率は50・6%だった。負けたとは言えかなり高いアベレージ。実は八村が欠場していた全23試合で、ウィザーズのFG成功率は45・0%だった。それ以前に八村が先発出場した25試合では46・9%。3点シュートも「八村出場」で37・1%で「八村欠場」で35・0%。ウォリアーズ戦でもウィザーズは22本中9本の3点シュート(成功率40・9%)を決めており、背番号8がチームにいるだけでチームのシュート成功率は確実に上がっている。

 八村自身はビールのようにたくさんのシュートを放つ選手ではない。しかし彼がインサイドにいることで相手のディフェンスはアウトサイドだけに集中することができなくなり、さらに何度もピック(スクリーン)に入ってロール(インサイドへ移動)することでビールやアイゼイア・トーマス(30)、ダビス・バターンズ(27)といったシューター陣からディフェンダ―を引き離すという大事な役割を間断なくこなしている。あくまで推論なので証明はできないが、ここに数字には出てこない彼の存在感が見え隠れしている。

 ウォリアーズ戦ではひとつだけスコット・ブルックス監督(54)がヒントを与えてくれた。それは第4Qのローテーション。八村はこのクオーターの最初からコートに立ったが、100―111で迎えた残り5分52秒にベンチに下がった。復帰初戦ですでに出場時間は23分に達しており、おそらくそこがこの日の“終業時間”だったのではないだろうか?

 しかしこのあとウィザーズは5点差にまで急追。するとブルックス監督は残り3分22秒(スコアは110―117)では八村を再投入するのだが、それは点差ゆえに「3点」を狙わざるをえない状況を考慮して、ルーキーの「Intangible」な部分を使おうと考えたような気がしてならない。

 もちろんチーム成績は1人の選手だけで変わるものではないが、八村の周囲には“状況証拠”が多々ある。平均得失点差は八村が出場した試合がマイナス5・3であるのに対して、欠場した試合はマイナス6・4。たかが1点ちょっとと思うかもしれないが、NBAの試合はきわどい状態で争うケースが多いことを考えると、彼はやはり先発にふさわしい選手なのだ。あとは“数字に出る部分”に磨きをかけてもらえば「ライジングスター」から「オールスター」への道も見えてくると思う。(高柳 昌弥)

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