倉本委員長こう戦え!ゴルフ五輪会場は飛ばし屋有利 「金」スコア20アンダーも

[ 2019年8月7日 08:00 ]

<東京五輪企画 PGA倉本昌弘会長・インタビュー>色紙に「金メダル」と書き込むPGA・倉本会長
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 来年7月30日の東京五輪のゴルフ競技開幕まで1年を切った。会場となる霞ケ関カンツリー倶楽部は16年に改造を終え、メンテナンスを行いながら開幕を待っている。日本ゴルフ協会(JGA)オリンピック・ゴルフ競技対策本部強化委員会の倉本昌弘委員長(63)に、舞台となる霞ケ関CCの見どころと攻略ポイントを聞いた。 

 ――改造後のコースを実際にプレーしてどのような印象を持ったか?

 「ワングリーンになったところはもちろんだが、フェアウエーの位置やバンカーの位置もかなり考えられていると感じた」

 ――ワングリーンになった点はどうか?

 「今までの2つより、はるかに大きくなっている。ピンを切るところがたくさんある。どこにピンを切っていくかによって、攻め方が変わってくる」

 ――4年に1度の五輪競技。金メダルを争う大会は、海外メジャーのようなハードなセッティングになるのか?

 「いや、全く異質なものになると思う。というのも、メジャーと同じにしなきゃいけない理由は何もない。例えば五輪でサッカーのW杯と同じことをやりますかというと、やらない」

 ――五輪ならでは、ということ?

 「今回ぜひ見てほしいのはコースセッティング。メジャーではない、要は世界の最高峰を目指しているトーナメントではない。4年に1回、いろいろな地域のいろいろな国の人たちが出てきて戦うというのはこういうセッティングなんだというところ。恐らく優勝スコアは通算20アンダーくらいは出るのではないかと考えている。実力がフェアに出るのではないだろうか」

 ――どういう選手に有利になってくるのか?

 「フェアウエーは非常に広い。飛ばし屋に凄く有利だろう。多くのホールが290ヤードくらいから、グリーンに向かって下っているからだ」

 ――リオ五輪も強化委員長として現地に赴いた。優勝スコアは、男女ともに通算16アンダーだった。

 「東京五輪の方がスコアが出るだろう。リオは涼しかったし、グリーンを硬くすることもできた。今回は真夏に2週連続で開催する。芝の生育のために水をまかないといけないのでグリーンの形状が出てくるような硬さにはできない可能性がある。今回のポイントは、コンパクション(グリーンやフェアウエーの硬さを表す尺度)になるのではないか」

 ――順当にいけば男子では松山英樹が代表に選ばれる可能性が高い。

 「世界ランクの上位を占めるアメリカ選手は最大で4人しか来ない。そう考えると松山は凄くチャンスがあると思う」

 ――男子の翌週には女子も開催される。

 「リオもそうだったが、女子にとっては長くて厳しいと思う。よほど短くセッティングしないと女子の球だとグリーンに止まりづらい。飛距離とセカンドを止める技術が必要」

 ――女子では米ツアーを主戦場とする畑岡奈紗が選ばれる可能性が高い。

 「飛距離のあるレキシー・トンプソン(米国)とかアリヤ・ジュタヌガーン(タイ)と戦わないといけない。米ツアーで培った技を見せてほしい」

 ――全英女子オープンを制した渋野日向子はどう見るか?

 「パッティングもうまいし飛距離も出て、けれん味のないゴルフをする。五輪は出場人数が60人と少なく、予選落ちがなくて3位に入ればメダル。彼女のようにガンガンいくタイプには凄く向いている。凄く期待できると思う」

 ≪宿泊施設は今年12月に完成予定≫東京五輪・パラリンピック組織委員会は、大会時に選手団が宿泊する選手村の概要を発表した。銀座などの繁華街へ行きやすい中央区の晴海埠頭に位置する「都市型」選手村。三方を海に囲まれた44ヘクタールの敷地には14~18階建ての宿泊施設21棟、24時間稼働するメインダイニングホール、フィットネスセンターや診療所の複合施設、店舗があるビレッジプラザなどが設置される。五輪時に1万8000台のベッドが提供される宿泊施設は1~8人部屋で、競技会場へ向かう専用バス乗り場が各棟から近いのが特徴。宿泊施設は今年12月に完成予定で、五輪開幕10日前の来年7月14日に開村となる。

 ≪日本男女2人出場濃厚≫日本勢は男女とも2選手の出場が濃厚だ。男子は米ツアー5勝の松山英樹がエースとして期待が掛かる。「まだ意識はしていません」と話すものの、霞ケ関CCは10年のアジア・アマ選手権で優勝した実績もある。アドバンテージを生かしたいところ。女子は米ツアー3勝の畑岡奈紗が5月にコースを視察しており、母国開催での金メダルへ意欲十分。海外メジャーのAIG全英女子オープンを制して一躍脚光を浴びた渋野日向子も代表入りに名乗りを上げている。

 ≪東京に世界の強豪集結≫前回のリオではデング熱の影響で有力選手が参戦を見送るケースもあったが、東京には強豪が多数集結しそうだ。4月のマスターズを制したウッズは既に出場への意欲を示し、「年齢的なことを考えれば、自分にとってのチャンスは少ない。代表入りできるなら歓迎だよ」と話している。また欧州勢でもマキロイがアイルランド代表としての参戦を表明。前回金メダルのJ・ローズ(英国)や、ケプカ(米国)の出場も見込まれ、興味深い戦いとなる。

 ▽霞ケ関カンツリー倶楽部1929年10月6日に埼玉県川越市で開業。東コースと西コースから成り、日本で初めて36ホールを持つゴルフ場となった。東京五輪の会場となる東コースは、15年10月から約1年にわたり著名な設計家のトム・ファジオ氏の手によって改装。2グリーンを1グリーンにし、全長を484ヤード延ばして7466ヤードのパー71とするなどの変更を施した。

 ◆倉本 昌弘(くらもと・まさひろ)1955年(昭30)9月9日生まれ、広島県出身の63歳。81年にプロテストに合格し、翌82年には全英オープンで日本人歴代最高の4位に入る。92年にツアー25勝目を挙げて永久シード入り。14年に日本プロゴルフ協会会長に就任。16年リオ五輪、20年東京五輪で日本ゴルフ協会五輪競技対策本部強化委員長に任命される。ツアー通算30勝、シニアツアー8勝。1メートル64、66キロ。

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