【坂本正秀の目】フェデラーの土俵に立たされた錦織

[ 2019年7月12日 00:40 ]

テニス ウィンブルドン選手権第9日   錦織圭―フェデラー ( 2019年7月10日    英ロンドン・オールイングランド・クラブ )

<ウィンブルドン選手権第10日 錦織圭・フェデラー>第3セット、得点を奪われ険しい表情を見せる錦織圭(撮影・小海途 良幹)
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 第1セットはいい状態だった。立ち上がりに離されないことが重要な中で、最初のブレークやリターンも読んでいて、最高のスタートが切れていた。フェデラー以上に錦織がネットに詰め、ストローク戦でも引かなかった。フェデラーの強打に対して長いラリーに持ち込むことにも成功。特にバックハンドの精度がよく、ストレートとクロスを使ってフェデラーにプレッシャーをかけ続けていた。

 第2セット以降、大きく違ったのはサーブの差。フェデラーが一気にサーブのレベルを上げ、錦織はレベルが落ちてしまった。甘いところに入ってしまった。サービスゲームで苦しむ錦織に対し、リズムよくポイントを取っていくフェデラー。この影響でストロークのリズムにも差が生まれ始めた。

 錦織はフェデラーのサーブのレベルを想定していたはずが、それ以上の精度だったと思う。第1セットで読めていたものを相手が変えてきた。それに加え、徹底したワイドサーブ。錦織のフォアハンド側をデュースコートでは徹底的に狙っていた。フェデラーはもっとバックハンドでスライスで仕掛けてくるかと思ったが、重要な局面まで出してこなかった。バックハンドでより攻撃的にプレーしていた。こうなると、主導権がフェデラー側に行く。フェデラーはうまく戦術を立てていた。

 錦織は相手の土俵に立つつもりはなかっただろうが、立たされた印象だ。それがフェデラーの強さ。一気にギアを上げ、早い段階でつかまえて、引き離す。相手のミスを待ったり、ラリーを作るのではなく、攻め続け、よりアグレッシブになって引き戻す。それでフェデラー自身も乗っていた。このあたりが、やはり王者。錦織にしてみればすごいプレッシャーがあったと思う。

 だから、錦織はストロークに持って行きたくても、できない。今まで入っていた得意のバックハンドのストレートにもミスが出た。フェデラーが積極的に攻めてきたので、錦織自身も自ら攻めなくてはという焦りが出たと思う。ファーストサーブを入れないと攻められてしまう。セカンドサーブが甘く入るとリターンエースが来る。フェデラーはリターンミスもしていたが、フォアに回り込んで強打でプレッシャーを与え続けていた。よって錦織は唯一のブレークポイントも決めなくてはという焦りが出て、ミスしてしまったように思う。(WOWOW解説者、日本テニス協会公認S級エリートコーチ)

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2019年7月11日のニュース