サンウルブズSR除外…ラグビー界の未来が今、揺らいでいる

[ 2019年3月24日 15:30 ]

昨年5月のSR第13節・レッズ戦で勝利し喜ぶサンウルブズフィフティーン
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 サンウルブズが2020年シーズンを最後に、スーパーラグビーから除外されることが決まった。

 除外に到るまでの経緯は、すでに多くのメディアで報じられている通り。リーグを主催するSANZAAR(サンザー)と日本協会の主張は、細部でずれがあるが、それはお互いの立場、主張の違いをそのまま映し出したもののように見える。

 21年以降、新たに参戦契約を結ぶ場合に求められる年間10億円とも言われる参加料について、日本協会は現実に払えないし、当然、払うべきでもない。新規参入した16年当初から放映権料は分配されず、シンガポールでのホームゲーム開催義務を背負うなど不利益な契約を結んだ上に、さらに法外な要求をのめば、未来永劫(えいごう)に日本ラグビー界は足元を見られることになる。

 一方でこうも思う。いきなり10億円も吹っ掛けてくるような状況に追い込まれる前に、交渉や懐柔の余地はなかったのかと。22日、サンザーの発表を受けて東京都内で会見を開いた日本協会の坂本典幸専務理事は、「(サンザーの)意思決定には一切関われないのが実態」と言った。それは事実だ。であれば正面からではなく、四方八方から手を尽くせばいい。ビジネスの世界と同じだろう。そして結果を見れば、それは失敗に終わった、あるいは本気で手を尽くしてなかったということになる。

 日本協会の意思決定のあり方についても、今回の一件で改めて問題が浮き彫りになった。23日、臨時で開かれた理事会では、本題ではないサンウルブズ除外の件について、出席者から疑問の声が相次いだ。あまりの激しさに、岡村正会長が自ら声を発して場をおさめたほどだという。

 10日前の13日の理事会では、サンザーからの要求などは一切報告されず。坂本専務理事は報告しなかった理由について「最終的に(要求が)出そろったのがその後だから」と説明したが、これほどの重要案件にも関わらず、そんな理屈が通用するのか。副会長の1人ですら、「何の報告もなかった。(除外を)ニュースで知ったくらい」と言う。“密室政治”との批判は避けられないだろう。

 SR参戦継続ありきで議論されるのは、フェアではないと思う。サンウルブズが日本代表強化に果たしてきた役割は極めて大きく、新たなファン層も獲得した。一方で選手のウェルフェア問題は、今も完全に解消されたとは言えず。代表強化に、もっといい方策があるかも知れない。だが22日の会見で代替策が何一つ、具体的に発表されないことに、落胆せざるを得なかった。

 17年2月、日本協会が発表した新戦略計画「BIG TRY」に書かれた文言を抜粋する。

 すべての人を、夢中にできるか。
 壁は高いほうがいい。困難は大きいほうがいい。ラグビーはトライし続けるスポーツなんだ。(中略)歴史は変えた。次は未来だ。

 いろんな未来が、今まさに揺らいでいる。(記者コラム・阿部 令)

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2019年3月24日のニュース