渡利がリオ枠獲得 2階級UP実らせ…栄氏も「代表最有力」

[ 2016年3月20日 05:30 ]

女子75キロ級準決勝でモンゴル選手(下)を破りガッツポーズの渡利璃穏

レスリング・リオデジャネイロ五輪アジア予選第2日

(3月19日 カザフスタン・アスタナ)
 女子75キロ級の渡利璃穏(りお、24=アイシンAW)が優勝し、上位2人に与えられる五輪出場枠を獲得した。準決勝で昨年のアジア選手権2位のバドラフ・オドンチメグ(モンゴル)を5―2で撃破。決勝でもロンドン五輪72キロ級銅メダルのグゼル・マニュロワ(カザフスタン)に2―1で競り勝った。女子の場合、日本協会は他の有力選手との練習内容などを見て今月中に代表を決める方針だが、渡利が最有力となった。リオから6階級を実施する女子はこれで全階級の五輪出場が決定。一方、男子はこの日の4階級すべてで出場枠獲得を逃した。

 五輪出場枠が懸かった準決勝に、渡利の強い思いが込められた。自分より12センチも背が高い1メートル75のオドンチメグを果敢に攻め、タックルなどで3点を先取。2点を返されたものの、試合終盤には突き放した。

 終了と同時にガッツポーズを繰り出した24歳は「一つずつチャンスをつかみ取って、ここまで来られた」と感慨深げに話した。勢いに乗って臨んだ決勝でも、ロンドン五輪銅のマニュロワにタックルを決め競り勝った。

 昨年9月の世界選手権で、日本は女子6階級のうち5階級で五輪代表が内定。渡利がリオ出場を勝ち取るためには、選択肢は一つしかなかった。唯一、出場権がない75キロ級への転向。63キロ級の実力者が、2階級を飛び越える決断をした。

 1日5食で増量。昨年12月の全日本選手権は下限体重ギリギリの69キロで出場し、執念で優勝した。今は「練習前は71キロ、ごはんを食べて72キロ」まで増えた。日本協会の栄和人強化本部長は「75キロ級で出るしかないという気持ちになってから目に見えて強くなっている」と変化を語る。覚悟を決めた女は強い。精神的にもずぶとくなった。
 
2月下旬には右脛骨(けいこつ)の疲労骨折が判明した。医師からは「早く治したいなら手術」と勧められた。それでも「手術するなら五輪後」と決断。ランニングは十分にできないがケガを抱えてでも夢をかなえる道を選んだ。

 五輪過去3大会で代表を務めた浜口京子のような力強さはない。だが、スピードは十分。栄強化本部長はこの日「世界で十分に戦える。代表の最有力候補」と言い切った。ライバルは15年全日本選抜覇者で昨年の世界選手権をケガで辞退した鈴木博恵(クリナップ)、代わって世界選手権に出場した同選抜2位の飯島千晶(警視庁)ら。今月下旬の強化合宿で競り合うことになるが、「気を抜かず、メダルを獲ることに集中していく」と表情を引き締めた。

 ◆渡利 璃穏(わたり・りお)1991年(平3)9月19日、島根県松江市生まれの24歳。7歳の時、松江レスリングクラブで競技を始め、松江一中時代に全国優勝。強豪・至学館高から至学館大に進み、4年時の13年に全日本選手権63キロ級を初制覇。14年アジア大会でも同級で金メダルを獲得、昨年の全日本選手権は75キロ級に転向し初優勝した。1メートル63。アイシンAW所属。

続きを表示

この記事のフォト

2016年3月20日のニュース