伊調13年ぶり敗戦に傷心帰国 揺らぐ新スタイル「自分見失った」

[ 2016年2月2日 05:30 ]

帰国し成田空港で報道陣の質問に答える伊調

 理想と現実のはざまで五輪4連覇が揺れている。ロシアで行われたヤリギン国際で13年ぶりに敗れたレスリング女子58キロ級の伊調馨(31=ALSOK)が1日、成田空港着の航空機で帰国。レスリングの幅を広げるために新スタイルに挑戦したが結果が出ずにまさかの黒星。17日からタイで行われるアジア選手権出場も流動的な状況で、リオデジャネイロ五輪へ不安な胸中をのぞかせた。

 首からぶら下げたのは慣れない銀メダル。それでも他の選手と笑い合う姿に悲壮感はなかった。帰国した伊調は「あんな自分は初めてだったし、あんな自分もいるんだとビックリもしている」と落ち着いた表情で語った。

 ほぼ無名と言っていい22歳のオホン・プレブドルジ(モンゴル)にまさかの黒星。ただし表彰式の時点では「冷静に決勝戦を分析していた」と切り替え、試合翌日には他の選手のセコンドも務めた。今遠征の成富利弘監督も「我慢しているのかと思ったが、そうでもないみたい」とひどく落胆した姿は見なかったという。

 とはいえ、女子初の五輪4連覇が懸かるリオまで半年。課題を突きつけられたのは間違いない。いつでも結果よりも内容重視。何度優勝を重ねても一昨年の世界選手権は自己採点「45点」、昨年は「25点」と取り組む課題が消化できたかを厳しく見定めてきた。

 今大会では「攻撃の始まりの仕方が今までと違う」と従来より相手と間合いを取り、男子と練習する中で気づいた高度な駆け引きに取り組んできた。これまではそうしたチャレンジの中でも結果を出して189連勝を続けてきた。試合途中で勝つためのレスリングに切り替えられたからだ。しかし、今回はスイッチがうまく作動しなかった。

 「(新しいことへの)こだわりが強すぎた。自分が自分でなくなって、自分を見失っていた」

 五輪を前に今後もリスクを冒して理想を追うのか。「間に合うか分からないけど、どうにかして乗り越えたい」と伊調らしいこだわりを見せる一方で、第一人者として五輪の大切さも理解している。「五輪だけは勝ちにこだわらないといけない」。痛めている首の状況などもあり、アジア選手権の出場は不確定。実戦機会が減れば、不安を残したままで五輪を迎えることにもなりかねない。

 ▽伊調のプレブドルジ戦 先にアクティビティータイム(30秒以内に得点できなければ相手に1点)を取られて失点し、第1ピリオドで0―5。第2ピリオドも相手を崩せず、タックルをすくわれてバックを取られ、回されて一気に0―9。最後もタックルをかわされ、右足を取られたまま場外へ。相手が先に出たようにも見えたが、主審の判定は伊調の失点。5分9秒、無得点でテクニカルフォール負けとなった。

続きを表示

この記事のフォト

2016年2月2日のニュース