佐渡ケ嶽部屋に“帰郷”した17歳・鎌谷、息子から弟子になる覚悟

[ 2015年10月15日 09:45 ]

佐渡ケ獄親方(右)の横でガッツポーズの鎌谷

 大相撲の九州場所(11月8日初日、福岡国際センター)で楽しみな新弟子が初土俵を迎える。佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)の一人息子で、母方の祖父が第53代横綱・琴桜(故人、本名・鎌谷紀雄)という血を受け継ぐ17歳の鎌谷将且(まさかつ)だ。実家は千葉県松戸市の佐渡ケ嶽部屋。8年前に死去した先代師匠の元琴桜が鎌谷家初代当主とすれば、将且は3代目を期待される御曹司だ。

 もちろん将来的に部屋を継げるかどうかは本人次第だが、1997年(平9)11月19日に生まれたその瞬間から祖父に「将来は力士に」と後継者として期待をかけられた。本人の希望もあって中学1年から高校3年の現在まで6年にわたって全国屈指の強豪校・埼玉栄に相撲留学。1メートル87、150キロの立派な体に成長した。

 今夏、主将としてチームを全国制覇に導くなど十分な実績を残し、今月6日に埼玉栄高で入門会見を行った。「プロの世界は厳しいので気を引き締めたい。優しくかつ強くなりたい。まずは関取を目指したい」。背筋をピンと伸ばして決意表明した顔に笑みなどの“緩さ”は一切なく、既にプロの世界に骨をうずめる覚悟が備わっていたように見えた。山田道紀相撲部監督の指導の下、強豪校の主将という責任ある立場を経験したことで心もたくましくなった。入門会見後には“制服と靴”の学生姿から“浴衣と下駄”の力士姿に身なりを変えて佐渡ケ嶽部屋に帰郷し、所属力士全員の前であいさつ。その瞬間、父は師匠に、母はおかみさんに、そして実家は実家でなくなった。おかみの鎌谷真千子さんも「もう家族の部屋には絶対入れません」とたった一人の息子ではなく、周りと同じ一人の弟子として扱うことを誓った。

 幼少期から将且のことを弟のようにかわいがってきた幕内・琴勇輝(24)は「戻ってきて不思議な感じ。でも、一発目のあいさつで“お疲れさんでございます”と敬語で言われた。埼玉栄に行く前はため口で話していた時もあったし、言葉遣い一つとっても一皮むけた」と6年前と比べて精神面の成長を実感。部屋頭の大関・琴奨菊は「将且だから特別扱いはしない。現実を知ったら壁に当たる。そんな時に少しでも助けられたらね」と厳しくも後押しはしっかりすることを約束した。まずは琴鎌谷のしこ名で初土俵を踏み、順調に出世すれば父の琴ノ若を、そして大関昇進を果たせば祖父の琴桜を継承する予定だ。 (鈴木 悟)

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2015年10月15日のニュース