美憂長男アーセン42秒殺 一族悲願の五輪メダルをリオで!

[ 2015年4月26日 05:30 ]

インタビューに応える山本美優とアーセン(右)に向かい1番ポーズを決める祖父の郁栄氏

レスリングJOC杯全日本ジュニア選手権第1日

(4月25日 横浜文化体育館)
 マット界の申し子が16年リオデジャネイロ五輪へ向け“秒殺スタート”を切った。世界選手権を3度制した山本美憂(40)の長男・アーセン(18=GSA)が1回戦で42秒テクニカルフォール勝ち。72年ミュンヘン五輪に出場した祖父・郁栄氏と叔父で総合格闘家の“KID”徳郁が見守る中、初戦敗退した昨年大会の雪辱を果たした。26日に2回戦から決勝まで行われる。

 屈辱の敗退から1年。リベンジを期すマットでアーセンが瞬く間にポイントを重ねた。パワー、スピード、精神面、全てで門田をのみ込んだ。開始15秒すぎにバックを取って2点を先取。10秒後にバック投げで加点し、呼吸を乱すことなく42秒で仕留めた。セコンドの母・美憂は椅子から崩れ落ちそうなほど緊張していたというが、そんな心配も無用だった。

 「楽しかった。母さんがそばにいてくれたから、いいとこ見せようと思った」。息子は強く、たくましかった。

 中1からハンガリー・ブダペストに留学。寮生活ではパソコン3台、携帯電話7台、靴数足の盗難に遭い、外を歩いている時には刃渡り30センチのナイフを持って徘徊(はいかい)する男に遭遇したこともあった。危険にさらされても「慣れちゃえば楽しい」と思えるのは最強DNAを受け継いでいる証拠。昨年の挫折も山本家伝統“不屈の闘志”に火を付けた。

 13年世界カデット(16、17歳)選手権を制し、V候補に挙げられた昨年のこの大会で、よもやの1回戦負け。腰の負傷によるブランク明けの理由もあったが、1つの黒星が「地獄の一年」と化した。「(秒針の)チクタクの音で怖くなったり、頭狂いそうな夜もあった」。選手を続けようか迷った時、最愛の母の言葉が支えとなった。「自分を信じなさい。始まったばかりなんだから」。信じた結果、重圧がかかった初戦を突破し「背負っていた重荷がなくなった」と呪縛は解かれた。

 決勝を含めて残すは4試合。観戦した叔父のKIDは「当たり負けしないパワーがある。俺はとっととやめて総合(格闘技)に来てほしいけどね。でも親父(郁栄氏)もアーセンもレスリングの熱が強いから」と実力と熱意を認める。最大の目標はリオ五輪。「1回戦と同じように気を抜かず楽しみたい」。26日の最終日、グレコローマンを知り尽くす祖父をセコンドに、頂点を極める。

 ◆山本 アーセン(やまもと・アーセン)1996年(平8)9月8日、神奈川県生まれの18歳。実父は元Jリーガーの池田伸康氏。4歳からレスリングを始め、全国少年少女大会は優勝5回。13歳でハンガリーに留学しバビロン高に進学。来春ハンガリーの大学に進学予定。家族は母、弟アーノン(8)、妹ミーア(6)。1メートル69。

 ▼リオデジャネイロ五輪への道 9月の世界選手権(米ラスベガス)でメダルを獲得し、12月の全日本選手権に出場すれば内定する。世界選手権の3位決定戦で敗れて5位となった場合でも、全日本選手権で優勝すれば内定する。世界選手権の代表は昨年12月の全日本選手権と今年6月の全日本選抜選手権(東京)の試合結果と内容を参考に決められる。

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