阿部17歳大会最年少V 海老沼撃破!東京の星がリオも「狙う」

[ 2014年12月6日 05:30 ]

<柔道グランドスラム 男子66kg級準決勝>海老沼(上)を攻める阿部

柔道グランドスラム東京大会第1日

(12月5日 東京体育館)
 東京五輪の星がリオのホープに生まれ変わった。男子66キロ級で高校2年の阿部一二三(ひふみ、17=兵庫・神港学園高)が、男子の大会最年少優勝でシニアの国際大会デビュー戦を飾った。準々決勝では今夏の世界選手権3位のゲオルギー・ザンタラヤ(27=ウクライナ)、準決勝では8月の世界選手権で3連覇を達成した海老沼匡(24=パーク24)に優勢勝ちの番狂わせを演じた。これで来夏の世界選手権代表候補にも浮上。驚異の高校生は6年後の東京五輪どころか、2年後のリオ五輪での代表入りも現実的な目標となってきた。

 1分半を過ぎた頃、「イヤァアアーー!!」という雄叫びが場内に響き始めた。「試合中は自分でも声を出しているのか分かっていない」。技を仕掛けるたびに自然とあふれ出る闘争心。世界選手権3連覇の王者にも物おじせず、17歳の高校2年生が徐々にペースを握っていった。

 「世界王者との差を楽しめたらいいと思っていた」という準決勝。序盤は「様子を見て、相手の組み手に付き合ってしまった」と開始29秒で有効を取られた。「このままじゃ勝てない。自分らしい柔道をしようと思った」。勝負どころでの切り替えの早さだけでなくそこから実際に見せた柔道も高校生離れしていた。

 前に前にと距離を詰めて密着すると、得意の大腰などで揺さぶり、王者を後退させた。残り46秒、場外際で強引に内股にいくと一瞬の隙を見逃さなかった。「相手は凄く後ろに重心がかかっていた。ちょうどタイミングが合った」。返し技を狙いに来た海老沼をさらに大内刈りで切り返し、逆転の技ありを奪取。大金星につなげた。

 初のシニア国際試合だったが、その圧力は海老沼だけでなく、海外の強豪にも通用した。自慢の体幹の強さは小学生の頃に消防士の父・浩二さん(44)と土台を築いたもの。近所の公園で3キロのメディスンボールなどを使い、柔道に即した円運動を意識して約2時間、週3、4回のトレーニングを欠かさなかった。その体の強さが強引な攻めも可能にしている。

 今年は世界ジュニアで敗れた以外はあらゆるカテゴリーのタイトルを総なめにした。男子代表の井上康生監督は「高2で歴史を塗り替えた。2016年、2020年に向けても楽しみ。代表争いに入ってきた」と断言。名前に込められた「一歩ずつ前進」どころか、一足飛びに階段を駆け上がり、「ここまできたら狙っていきたい」とリオ五輪代表に名乗りを上げた。 

 ◆阿部 一二三(あべ・ひふみ)1997年(平9)8月9日、兵庫県神戸市生まれの17歳。6歳から兵庫少年こだま会で柔道を始め、神戸生田中2年で全中の男子個人55キロ級、同3年で60キロ級を制覇。13年4月に神港学園高に入学し、今年は全国高校選手権を73キロ級で制し、ユース五輪や全日本ジュニアでも優勝した。目標は五輪60キロ級3連覇の野村忠宏氏。右組み。得意技は背負い投げ、大腰。1メートル68、普段の体重は68キロ。血液型AB。

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