錦織 ぶっつけで「完璧」 甘え“封印”2年ぶり初戦突破

[ 2014年8月28日 05:30 ]

復帰戦を白星で飾り、観客の声援にガッツポーズで応える錦織(AP)

テニス全米オープン第2日

(8月26日 ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター)
 男子シングルス1回戦で第10シードの錦織圭(24=日清食品)がぶっつけ本番の不安を吹き飛ばした。今月4日に右足裏の母指球付近にできた腫れ物を切除してからの復帰戦で、世界ランク176位のウェイン・オデスニク(28=米国)に6―2、6―4、6―2でストレート勝ちし、2年ぶりに初戦を突破。佐藤次郎と並ぶ日本男子最多の4大大会通算32勝目を挙げた。2回戦は世界48位のパブロ・アンドゥハール(28=スペイン)と対戦する。

 世界のトップに立つにはある種の思い込みが必要かもしれない。自己暗示といってもいい。手術をした右足はもう大丈夫。そう強く思うことが、この日の錦織のスタートダッシュを可能にした。

 開始直後から早い展開で攻勢をかけ、相手のセカンドサーブも積極的に叩きにいった。決定打の数はオデスニクの3倍近い37本。普段以上に積極的な仕掛けが目立ち、相手のミスにも助けられて一方的な試合展開となった。「いつも通りにしばいていくことができたので、そのままいいプレーができた。1ポイント目からいい感覚だった」

 右足の母指球あたりにできた腫れ物を今月4日に切除し、抜糸を済ませたのは1週間前の19日。切開した部分の痛みは完全に消えてはいないが、マイケル・チャン・コーチのカミナリが錦織の甘えを消した。

 開幕3日前に行った記者会見で、錦織はケガの状態を説明し「当日に痛みがぶり返したら出場も分からない」と不安な心境を正直に吐露した。これがチャン・コーチの逆鱗(げきりん)に触れた。弱みをさらし、それを口にすることは自分にネガティブな刷り込みをするだけ。わずかな差が勝敗を分ける世界のトップで戦ってきたチャン・コーチにとって錦織の発言は許容できなかった。

 逃げ道をつくらずに戦うことを求められ、錦織も覚悟を決めた。終盤には靴を滑らせながら返球するなど、ケガを忘れたようなプレーを見せた。第2セットで少し息切れした以外は「ほぼ完璧なゲーム」と自賛する内容。「長いラリーの後はすぐに体力、呼吸が回復しなくてつらいところがあった」とスタミナ面の不安は残しつつも、調子は確実に上がってきた。

 これで日本人最多タイの4大大会通算32勝に到達した。「復帰戦なのに調子がいい時と同じぐらいのプレーができた。満足している」。果たしてこの言葉も自己暗示だろうか。そうとばかりは言い切れない内容の伴った勝利であることは、錦織の明るい表情が物語っていた。

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