東京五輪 優勢一転 原発汚染水問題に質問集中も準備不足露呈

[ 2013年9月6日 06:00 ]

初の記者会見で厳しい表情を見せる東京五輪招致委の竹田恒和理事長(右)と日本体協の張富士夫会長

 注目の国際オリンピック委員会(IOC)総会は7日に開幕し、日本時間8日午前5時にはいよいよ2020年夏季五輪の開催地が発表される。これまで招致レースで先頭に立っているとみられていた東京だが、東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題を機に情勢は一変、まさかの逆風が吹き始めた。IOC内部でも東京開催に疑問の声が上がり、マドリードを有力とする海外メディアも出始めた。開催都市決定まであと2日。文字通りのラストスパートが不可欠となった。

 優勢とされてきた東京に暗雲が垂れ込めた。5日付の英紙タイムズは、東京電力福島第1原発の汚染水問題に対する懸念が高まっているとして、招致レースの「形勢が一変する可能性がある」と指摘。日本政府が今月上旬、汚染水対策として国費470億円を投入する方針を決めたのは、招致活動への悪影響を打ち消すためだとの見方を示した。IOC筋の話として今なお「東京が優位」とも報じているが、予断を許さない状況になった。

 風向きが変わったのは4日の会見だった。汚染水漏れに関して竹田恒和会長は明確な答えを持ち合わせていなかった。ある招致委員関係者は「6、7月は良かったけど8月に入ってからは…。汚染水の問題もある」と話していたが、東京の招致委が思っている以上に世界は放射能に敏感。5日の会見でも質問が飛び、馳浩衆院議員が「モニタリングの結果、問題はない」と説明に追われた。招致委内部から「政府の対応を説明できるように準備すべきだった…」との言葉も漏れた。

 汚染水漏れについては東京を支持してきた欧州の有力委員でさえ「重大な問題」と発言。東京寄りの別の委員も「(東京に)投票しない口実になる」と語った。汚染水問題を英BBC放送などが8月以降繰り返し報じていることもマイナス。アジアの委員も「不安感が募る。東京にはダメージだ」と語った。

 5日現在でブックメーカーでは依然として本命は東京だが、12年のロンドン、16年のリオデジャネイロとも2番人気から逆転した。実際、東京が前日までの1・7倍から2・1倍に“格下げ”となり、マドリードが3倍から2・4倍に上昇した。各ブックメーカーのオッズでマドリードは前週まで3番手扱いだったが、ここ数日でイスタンブールを抜いて2位に上昇。1位東京との差はぐんぐんと縮まっている。

 あるロビイストは「放射線の問題は五輪までの7年間で解決できるか分からない。経済危機は7年後には解決しているはず」とマドリード優位と見る。IOC幹部は「東京は倒れかけている。計画が最高なのは分かっているが、勝負は別」と指摘した。東京にとってこれからが正念場。荒木田裕子招致委員会理事は「一喜一憂している場合じゃない。やってきたことを信じるしかない」と話した。残された時間はあと2日。ベストを尽くして最終日のプレゼンに全てを懸ける。

 ≪理恵ら猛アピール≫5日の会見には競泳の入江陵介や体操の田中理恵、レスリングの小原日登美ら歴代のオリンピアン、パラリンピアン15人が出席した。スポーツの普及やアスリートの環境整備を掲げた「アスリート宣言」の内容を説明。64年東京五輪に選手として参加した川淵三郎氏は「前回はまだ日本は新興国だった。その頃と比べて日本のスポーツ文化の変化、街そのものの変化を見てもらいたい」と語った。

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