吉田ヒヤリ五輪切符「神様がこのままじゃダメだぞ、と」

[ 2011年12月24日 06:00 ]

決勝で村田(右)に激しく攻められる吉田

レスリング全日本選手権最終日

(12月23日 東京・代々木第2体育館)
 女子55キロ級決勝で吉田沙保里(29=ALSOK)が村田夏南子(18=安部学院高)に苦戦を強いられながらも10連覇を達成。ロンドン五輪代表に決定した。吉田と同じく日本女子初の五輪3連覇を目指す同63キロ級の伊調馨(27=ALSOK)は圧倒的な強さで3年連続9度目の優勝を果たし、こちらも五輪出場が決定。同72キロ級の浜口京子(33=ジャパンビバレッジ)は男女通じて最多となる15度目の優勝で、五輪出場に再加速した。

 史上4人目の大会10連覇、3大会連続の五輪出場決定。安どの理由も歓喜の理由もあったはずの吉田に、笑顔はなかった。「ああいう試合をしてしまって情けない。五輪3連覇へ向けて、神様が“このままじゃダメだぞ”と教えてくれてるみたいだった」。無敵の女王が、苦笑いで「ダメ」を繰り返した。

 初戦は23秒でフォール勝ち。準決勝も実力者・松川を2―0で退けた。だが、迎えた決勝で18歳の村田に苦しめられた。第1ピリオドは「いつも前に出している」左脚にタックルを食らい、先制点を許す。直後に相手をひっくり返して2点を奪ったが、終了間際に再びタックルで1失点。大きな得点が優先となるためピリオドは奪ったものの「点を取られすぎた」と首を振った。

 第2ピリオドは1―0も、最後まで最大の武器タックルでは無得点だった。「これで五輪が決まるとか、高校生に負けられないとか、あったかもしれない」と精神的な重圧も理由に挙げたが「なんか腰が浮く感じで、ふわふわしていた。やっぱり世界選手権の決勝でタックルを返されて、怖い感じもあった」とトラウマも吐露した。

 しかし、その“弱み”を口にできることが、3度目の五輪を迎えた29歳の成長でもある。北京五輪イヤーの08年1月、連勝がストップした際は泣き崩れたが、今回は「まだ(五輪まで)8カ月ある」と言い切った。最後は「若い子が出てくるのはうれしい。一緒に頑張っていければ」と後輩にエールを送る余裕も見せた29歳は、日本女子初の五輪3連覇へ「いい勉強だった。練習し直しです」と簡単に気持ちを切り替えてみせた。

 ◆吉田 沙保里(よしだ・さおり=女子55キロ級)04年アテネ、08年北京両五輪で金メダル。01年から08年1月まで続いた連勝は119で止まったが、鋭いタックルを武器にその後も再び連勝中。9月の世界選手権で9連覇。アジア大会で3連覇。中京女大(現至学館大)出、ALSOK。1メートル57。29歳。三重県出身。

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2011年12月24日のニュース