琴奨菊、大関グイッ!“ライバル”稀勢の里討ち

[ 2011年9月21日 06:00 ]

稀勢の里を寄り切りで倒した琴奨菊

大相撲秋場所10日目

(9月20日 東京・両国国技館)
 大関獲りの琴奨菊が“ライバル”稀勢の里との1敗対決を制して、場所後の大関昇進に一歩前進した。相手の張り手にも動じることなく、ひたすら前に出て会心の寄り切り。名古屋場所では終盤に崩れて昇進“持ち越し”の屈辱を味わったが、今場所は連日落ち着いた取り口を披露しており、リベンジ昇進が現実味を帯びてきた。全勝の白鵬は時天空を寄せ付けず、28場所連続の2桁勝利をマーク。1敗は琴奨菊と臥牙丸の2人。

 反骨心と集中力でたぐり寄せた白星だった。琴奨菊は立ち合いで相手の右張り手にも動じず、迷うことなく左手で稀勢の里の上体を起こした。すかさず右もおっつけで攻め、怒とうの寄り。1敗を守っても「どんな相手でも同じ1勝。その積み重ねです」と冷静だったが、会心の勝利におのずと笑みがこぼれた。

 最近イチローらの本を読み込むなどアスリートの語録に関心を持つ琴奨菊は、前日19日に巨人戦で勝利した中日・落合監督のコメントを引用して「やるべきことをやるだけ、と思った。無理なことを考えても無理なので」と話す余裕も見せた。

 同じ一門で、2歳下のライバルとの決戦を前に、支度部屋では絶対に負けられない気持ちを発散していた。相手の指がかかりにくいよう、まわしをきつく締める琴奨菊。この日はひときわ入念だった。午後4時40分すぎ、珍しく一度締めたまわしをほどき締め直した。2度目は1周巻くごとに3人の付け人に引っ張らせ、爪すら入る隙間も与えないようパンパンに締めあげた。通常より1分ほど長い8分かけて締めた“決戦仕様”の締め込み。大銀杏(いちょう)を結ってもらう間はハウンドドッグの名曲「ff(フォルテシモ)」を聴いて気持ちを高揚させた。

 昨年の九州場所。琴奨菊は、連勝中だった白鵬と3日目に対戦が組まれていた。しかし前日に対戦した稀勢の里が横綱の連勝を「63」でストップ。さらには同期の豊ノ島も優勝決定戦で白鵬と対戦するなど大活躍した。地元場所でライバルに“おいしいところ”を持っていかれた悔しさで闘争心が復活。今や大関獲りの最前線を走っている。

 昇進の目安とされる直近3場所33勝には、残り5日で3勝すれば到達する。「重圧はない。きょうはゆっくりして、あした頑張ります」。小雨が降る中でも上機嫌で引き揚げる足取りは、いつになく軽やかだった。

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2011年9月21日のニュース