川淵三郎氏 Jよオランダリーグを目指せ 15日でリーグ誕生30年目、初代チェアマンが提言
Jリーグは93年5月15日に東京・国立競技場で開幕戦を開催し、日本初のプロサッカーリーグとしての歴史をスタートさせた。今年は30年目となる節目のシーズン。5月15日の「Jリーグの日」を前に、91~02年に初代チェアマンを務めた川淵三郎氏(85)がスポニチ本紙のインタビューに応じた。Jリーグの基礎を築いた川淵氏は29年の道のりを振り返り、将来に向けた提言を行った。
――今年Jリーグは30年目のシーズンを迎えた。初年度10チームだったJクラブは58チームまで増えた。
「Jリーグをスタートする時の会見で“各県2チームで100チームにしたい”と言ったらほとんど相手にされなかった。“ほら見てみなさいよ”という感じ。小さな県でもJリーグで活性化したいという思いを持った人が多く、Jリーグの理念は全国に浸透したと思う。これまで経営危機に陥ったクラブが10チームあった。そのたびに市長さんや社長さんや地元の有志の方と一緒に乗り切ったので(苦労が)報われたという思いもある」
――Jリーグが現在抱えている課題は?
「(J1の)平均観客動員数が94年に1万9500人くらい(1万9598人)になって以降ずっと2万人を超えなかった。19年に初めて2万人(2万751人)を超えたが、本当はもっと早く超えていなくてはおかしい。。何が問題かというと、年々観客の平均年齢が上がっている。つまり若年層の開拓がうまくいっていない。その問題をどう解決するかが勝負だと思う」
――観客を呼ぶにはスター選手が必要では?
「僕は以前から“Jリーグはオランダリーグを目指せ”と言っている。オランダリーグは人気があって、いつもスタジアムは満員になる。代表クラスのほとんどはイングランド、スペインなど海外でプレーしていてオランダリーグにいない。しかし将来有望な若手がどんどん出てきてリーグを盛り上げている」
――日本でも代表クラスは海外に出て行く傾向が強まっている。
「海外志向が強いのは凄くいい。Jリーグで実績を残した選手が欧州のリーグに移籍した後、埋め合わせをできる選手が出てきてJリーグを盛り上げてほしい。欧州で成功した後、現役として活躍できる間にJリーグに帰ってくる。帰ってくると同時に今度は若手が欧州に出て行く。サステナブル(持続可能)だね。欧州の主要リーグで20人くらいがレギュラーになることが前提で、このサイクルができた時に世界に冠たるJリーグになると思う」
――この先どんなリーグになってほしい?
「(ドイツ1部の)Eフランクフルトはゴール裏まで年間シートになっていて、もう何年も取れないと聞く。そういうふうにならないと、日本にサッカー文化が根付いたとは言えない。フリーで買えるのは2割くらいで、8割くらいが年間シートになる。そのくらいまでどう持っていけるか。必要なのは魅力あるゲーム。イングランドでは2部、3部、4部のクラブのスタジアムでも地元ファンで満員になる。イングランドのリーグができたのは1888年。130年の歴史の中で培われてきた。Jリーグは30年目。まだまだ発展途上だと見ていていいのかなと思っている」
【取材後記】「Jリーグの歴史で一番印象に残っている出来事は?」という質問に、川淵氏は93年5月15日の開幕戦を挙げ「超満員で熱気が凄かった。試合が終わった時(元ブラジル代表)ペレが涙を流し“良かった”と言ってハグしてくれた」と感慨深げに語った。
29年前、約6万人の観衆で埋まった国立で56歳の川淵氏は「スポーツを愛する多くのファンの皆さまに支えられまして、Jリーグは今日ここに大きな夢の実現に向かって、その第一歩を踏み出します」と開会宣言を行った。「スポーツを愛する」という言葉には日本のスポーツ界を変えたいとの思いが込められていた。
その言葉通り川淵氏はサッカーだけでなくスポーツ界全体の改革に取り組んできた。取材した日も他競技の協会幹部が助言を仰ぐため川淵氏のもとを訪れていた。85歳は意気軒高。最近はゴルフやマージャンでリラックスする時間も増えたようで血色も良く、40分間途切れることなく話し続けた。スポーツ界のためにまだまだ頑張ってもらわなければ困る、唯一無二の存在だと再認識した。(サッカー担当キャップ・福永 稔彦)
▽オランダリーグ エールディビジと呼ばれ1956年に創設。18チームで争う。オランダ選手権時代も含め、アヤックスが最多優勝36回。欧州チャンピオンズ杯(現欧州CL)では70年のフェイエノールトに続いて71~73年にアヤックスが3連覇し、88年にはPSVアイントホーフェンも優勝。近年はファンダイク(リバプール)、F・デヨング(バルセロナ)ら自国で経験を積んだ有望選手が次々と欧州の5大リーグへステップアップしている。UEFAリーグランキングは7位。
◇川淵 三郎(かわぶち・さぶろう)1936年(昭11)12月3日生まれ、大阪府出身の85歳。大阪・三国丘高時代にサッカーを始め、早大、古河電工でFWとして活躍。早大時代から日本代表に選ばれ、64年東京五輪に出場。引退後は古河電工監督、日本代表監督を務め、Jリーグ初代チェアマン、日本サッカー協会会長、日本バスケットボール協会会長などを歴任。現在は日本トップリーグ連携機構会長、日本サッカー協会相談役。
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