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【オシムの提言3】内戦の直前で思ったことは…

[ 2014年4月23日 10:40 ]

言葉を交わす香川(左)と本田。オシム氏は選手同士の話し合いが大事だと訴えた

 ――開幕まで2カ月を切った。この時期、監督や選手に必要な準備とは。

 まずはいろいろなものをよく見極めることから始める。たとえばスタジアムのピッチの状態がどうなっていて、選手たちがそれにどう適応すればいいのか。ピッチ状態が必ずしもいいとは限らない。それは実際にその上を走る選手の方が、外から見る我々よりも具体的に感じることだからだ。全てのピッチが新しく、思ったよりも硬いかもしれないし、軟らかいかもしれない。

 ブラジルは海岸線が長いから、砂浜が多い。たぶん通常のピッチよりも砂が交じる比率が高いのではないか。だがそれを言い訳にしては駄目だ。

 ただ、誰かに有利と言うことにはならないし、さほど心配の種にはならないだろう。サッカーはケガの危険が常にある。そういうスポーツだから、どう対処していくかを身に付けていかなければならない。さまざまなことがたて続けに起こるとパニックに陥るからだ。接触プレーがあり、疲労がたまり筋肉に問題が出てくる。それに十分対応できなければサッカーはできない。それよりも重要なのはメンタルだ。不安やプレッシャーから解放されるために少し休養が必要で、家族と過ごしてサッカーのことを少し忘れるのが良いかもしれない。もちろん全く考えないことなどできない。これだけ大きなイベントだから意識しないわけにはいかない。2年以上も待ち望んだW杯を「今は全く考えていない」などとは言えない。

 ――オシム氏がユーゴスラビア代表監督としてイタリア大会に出場した90年、同国は内戦の直前だった。

 片や戦争、もう一方で平和の象徴でもあるサッカーが並び立つことはない。選手も途方もないプレッシャーを受けていた。家族が戦争に巻き込まれ、しかもチームメートの家族同士が戦う関係になった。それがどれだけ厳しいか。彼らはもの凄くナーバスになった。今の時代は選手も落ち着いてサッカーに集中できる。命の危険も、生活を損なわれる危険もなく目標に向かってまい進できる。落ち着いてプレーができれば、クオリティーの高いプレーができるはずだ。

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2014年4月23日のニュース