×

日本代表 ヨルダン戦苦戦の最大の要因は「ドリブル主体」の攻撃

[ 2011年1月11日 06:37 ]

ヨルダン戦の前半、近い距離でプレーする本田圭(左)と前田

アジア杯1次リーグB組 日本1―1ヨルダン 


カタール・ドーハ)
 【名波浩の蹴点】日本代表は9日のアジア杯1次リーグ初戦ヨルダン戦に1―1で引き分け、2大会ぶりのアジア制覇に向けて厳しいスタートを切った。アルベルト・ザッケローニ監督(57)就任後初の公式大会の初戦で見えた課題と収穫は何なのか。大会を中継するテレビ朝日の解説者で、現地で日本代表を密着取材している00年アジア杯レバノン大会MVPのスポニチ本紙評論家、元日本代表MF名波浩氏(38)が分析した。

 主導権を握りながら攻めあぐねた最大の要因は、攻撃のスイッチがドリブル主体になっていたことだ。

 ドリブルはパスに比べて攻撃スピードが遅くなるため、相手に守備陣形を整える時間を与えてしまった。大事な大会の初戦でセーフティーなプレーを選択する気持ちは理解できるが、ボールを奪った瞬間に縦パスが入らず、横パスやバックパスが多かったことも課題。前半のヨルダンは極端に引いて守っていたわけではなく、積極的にボールを奪いに来ていただけに、速い攻撃を意識すればもっとチャンスをつくれたと思う。

 トップ下の本田圭と1トップの前田の距離が近すぎたことも気になった。本田圭は前田とのワンツーやフリック(ボールをこするように蹴ってパスの角度を変えて、トップにパスを入れるプレー)を狙って意図的に前田に寄っていたそうだが、逆に相手のセンターバックと2対2の状況になり、スペースを消す結果となった。前田は相手DF2人を引きつけてプレーできる能力があるだけに、前田が1対2の状況になるぐらいの距離を保っていれば、本田圭はもっと自由にプレーできたはずだ。

 本田圭とは対照的に、後半(13分から)トップ下に入った香川は(相手DFラインとボランチの間の)ファジーな位置でボールを受けて前を向いてプレーできていた。後半、両サイドバックの内田、長友の攻撃参加が増えたもの、香川が中盤で時間をつくったからだ。ヨルダン戦に関しては本田圭のトップ下より香川の方が明らかに機能していたが、個人的には本田圭と前田がしっかりとコミュニケーションを取った上で、本田圭のトップ下をもう一度試しても良いと思う。

 課題の多い内容の中で、ボランチ長谷部のクレバーな動きは目立った。先制点を挙げたヨルダンが後半は前半よりも最終ラインを3~5メートル程度下げて守備を固めたことを受け、長谷部は3列目から積極的に前線に飛び出すことを意識していた。ゲームをつくる場面ではスペースをつくる動きで遠藤をフリーにさせて、長谷部自身は後半18分にボレーシュートを放つなどフィニッシュに顔を出した。後方から飛び出す選手のマークは難しいため、守備を固める相手に対して効果的だった。

 (9日の)シリア―サウジアラビア戦を見たが、13日に日本が対戦するシリアも危険な相手だ。基本的には行き当たりばったりのサッカーだが、前線の4人は前への推進力がありカウンターは強力。シリアにはアジア杯出場が夢だったという選手もいるようで、ハードワークのレベルもヨルダン以上だった。現在の日本代表は若い選手が多く、アジアの公式大会が初めての選手も多い。ヨルダン戦でアジアをなめたらいけないと、あらためて感じたはずだし、修正すべき点をしっかりと整理して、シリア戦へ向けた準備を進めることが重要になる。

続きを表示

サッカーの2011年1月11日のニュース