【凱旋門賞】万全態勢で受け入れ 日本馬“拠点”小林厩舎とは

[ 2014年9月23日 05:30 ]

馬房の前で笑顔を見せる小林智師

 いよいよ2週間後に迫った凱旋門賞(10月5日、仏ロンシャン)。日本調教馬初の制覇を目指し、ジャスタウェイ(牡5=須貝)、ゴールドシップ(牡5=須貝)、ハープスター(牝3=松田博)の3頭も21日、無事にフランス入りを果たした。3頭が入厩した小林智厩舎とはどんな厩舎なのか探った。

 近年の日本馬の凱旋門賞遠征に欠かせない存在となっているのがフランス・シャンティイの小林智厩舎。小林調教師は、凱旋門賞が行われるフランスで開業する唯一の日本人トレーナーであり、06年のディープインパクト以来、数々の名馬の遠征に携わってきたパイオニアだ。

 パリの北東40キロにあるシャンティイは、3000頭近くの現役競走馬が日々調教されているフランス競馬の総本山。トレーニング施設としては170年の歴史を持ち、小林厩舎はラモルレーと呼ばれる地区にある。エクトを出走させるE・ルルーシュ厩舎やエルコンドルパサーなどを受け入れたT・クラウト厩舎が近所で、厩舎のすぐ裏には全長4000メートルを誇るダート坂路コースがそびえる。オルフェーヴルも芝コースでの追い切り日以外は連日ここで乗り込まれた。

 「調教の距離は自在に調整することが可能です。傾斜は日本の坂路よりも緩やかですが、ダートが細かく、下も深いためにクッションが利いていて、脚元にも優しい馬場です」と小林師。

 厩舎内にはウオーキングができるスペースがあり、調教の前後や午後運動に使用されている。緑豊かな自然と広大な土地を生かした厩舎で、馬も幸せそうに過ごしている。

 「シャンティイで調教されている馬たちは、総じてカイバをよく食べますね。ちょっとした運動でも日本の逍遥(しょうよう)馬道のような落ち着いた環境が続くため、日々のストレスが少なく、常に気持ちがリラックスできているのではないかと思います。たくさん食べてくれれば、その分負荷を掛けた調教を行うことができますから、フランス調教馬の強さの秘密はこのあたりにもあるのではないでしょうか」

 今回の受け入れに向けては、馬房にゴムシートを張る工事を済ませ、万全の態勢で3頭の日本馬を迎え入れた。

 「まだ目立った実績もない私に、このような名馬たちを預けてくれることは光栄なことです。全力でサポートしたいですし、心から勝ってほしい」

 日本初の凱旋門賞馬、そして小林調教師が自ら育て上げる未来のG1ホースが、この場所から誕生することを願わずにはいられない。

 ☆小林 智(こばやし・さとし)1974年(昭49)7月20日、千葉県生まれの40歳。日大理工学部卒業後、北海道のコアレススタッドに勤務。02年渡仏。ハモンド、ギブソン、デルザングル厩舎で厩舎長、調教師補佐を務め、08年日本人として初めて仏の調教師試験に合格。現在5人のスタッフを抱え、20頭を管理。通算38勝。これまでヒルノダムール、ヴィクトワールピサ、オルフェーヴル、アヴェンティーノの仏遠征に馬房を貸与した。

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