上村が引退…目の病気克服し568勝、次は調教師の道へ

[ 2014年2月7日 05:30 ]

スリープレスナイトで08年スプリンターズSを制した上村

 JRAは6日、引退調教師12人と引退騎手1人(ともに28日付)と、14年度新規騎手免許試験合格者7人を発表した。08年のスプリンターズSをスリープレスナイトで制した上村洋行騎手(40)が引退を発表。新人王に輝きながら、目の病気で引退寸前に追い込まれた通算568勝(6日現在)の苦労人がムチを置く。

 山あり谷あり。上村が22年間の騎手人生に幕を下ろす。

 6日朝、上村の姿は美浦にあった。関係者へ引退のあいさつをするためだ。「決断したのは昨年、調教師試験に落ちた後。騎手を続けながら合格するのが一番だったが、勉強に専念しなければいけないと感じた。昨夏から少しずつイメージ通りの騎乗ができなくなっていたし(目の)病気のこともあった。悩んだ末の決断。未練はたっぷりある」。まだ40歳。複雑な心境を明かした。

 若手時代は華々しかった。デビューした92年、京王杯AHをトシグリーンで重賞初制覇。いきなり40勝。94年、ナムラコクオーとのコンビでダービー参戦。2番人気に支持された(6着=1着ナリタブライアン)。97年にはサイレンススズカ。新馬戦から神戸新聞杯まで6戦の手綱を取った。「スズカの乗り味を超える馬にはまだ出合っていない」。感触を振り返った。

 順風満帆の騎手人生を突然、試練が襲った。03年に「黄斑上ぶどう膜炎」という目の病気を発症。視界が白く濁り、日々、視力が落ちていった。引退も考えたが4度の手術を経て克服。視力を取り戻した後も成績は伸び悩んだが、そんな失意の時期に手を差し伸べたのが橋口師だった。

 師の管理馬スリープレスナイトとのコンビで挑んだ08年スプリンターズS。騎手生活17年目にして初のG1制覇。師と熱く抱き合った。「先生は病気になってからも僕を起用し続けてくれた。いろいろな思いを胸に抱きながらの勝利だった」

 今後は栗東・池添厩舎で調教助手を務めつつ、引き続き調教師試験にチャレンジする。「調教師も大変な仕事だが、この世界にいる以上はやってみたい。もう気持ちの区切りはついている」。今週は京都競馬場で9鞍がスタンバイ。ラスト騎乗は23日、京都の予定だ。

 ◆上村 洋行(うえむら・ひろゆき)1973年(昭48)10月23日、滋賀県生まれの40歳。父は厩務員。92年、柳田厩舎所属で騎手デビューし40勝を挙げ、JRA賞最多勝利新人騎手賞。通算7850戦568勝(6日現在)。1メートル64、49キロ、血液型O。

 ▼黄斑上ぶどう膜炎 眼球の内側に張り巡らされた神経でできた膜が網膜。その網膜の中で、特に物体をはっきりと感じ取る部分が黄斑。その黄斑の上にセロハンのような膜ができる。眼球に数箇所の穴を開け、眼球内の液体を半分ほど出し、奥の膜を取り除く。手術後は2週間程度、一日中下を向いていなければならない。

 ▼橋口弘次郎師(スリープレスナイトを管理)今年に入ってから、引退しますとあいさつがあった。うちの馬でG1を勝ってくれて、ありがとうという気持ち。今後は調教師を目指すようだから目標をぜひ実現してほしい。

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2014年2月7日のニュース