防衛は甘くないぞ~羽生九段タイ勝!藤井王将の封じ手ミス逃さず タイトル通算100期へあと2勝

[ 2023年2月11日 05:20 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第4局第2日 ( 2023年2月10日    東京都立川市「SORANO HOTEL」 )

ショコラティエの姿で溶かしたチョコを手に笑顔を見せる羽生九段(撮影・高橋 雄二、西尾 大助、小海途 良幹、木村 揚輔、河野 光希、藤山 由理)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第4局は10日、東京都立川市のSORANO HOTELで第2日を指し継ぎ、先手の羽生善治九段(52)が藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=を107手で下し、シリーズ成績を2勝2敗のタイとした。最強王者相手にタイトル通算100期目を獲得するまで、あと2勝。第5局は25、26日に島根県大田市の「さんべ荘」で行われる。

 天下の藤井聡太を、ここまでコテンパンにやっつける棋士が他にいるだろうか。「(今局を)負けてしまうとカド番になる。タイに戻せてよかったです」との心境吐露とは対照的な快勝譜が、歴史にまたも刻まれた。やっぱり羽生善治は羽生善治だ。

 対局開始時から降り続く雪はやむことなく、立川の地を銀世界へと変えていく。積もる雪のかさ高と正比例するように、羽生は順調にリードを広げていった。相手の得意戦法にあえて挑む、角換わり腰掛け銀でスタートした第1日(9日)に見せた▲7八王。「確か豊島(将之九段)さんの対局であった手。それを土台にしたんです」と種を明かす。1年前の2月4日に行われたA級順位戦。斎藤慎太郎八段が豊島相手に組んだ異型とも言うべき陣形を、羽生の頭脳はしっかり覚えていた。結果は151手で斎藤の勝利。「大熱戦だったんですよね」。以来、温めていたスペシャルプレーを、ここで角換わり大好きの藤井にぶつける勇気が開花した。

 第2日午前9時に開封された藤井の封じ手△5二同王は、明らかな緩手だった。この時点で銀桂交換の駒損状態でもあり「ゆっくりしていられない」と決意した羽生は、ひたすらパンチを繰り出した。「攻めがつながるか、それとも切れるのか」。ギリギリの線で主導権を握り続け、73手目に満を持して3一に角を放つ=第1図。「まだまだ難しい展開だと思っていた」と顧みるものの、ここで藤井が74手目を指すまで74分を消費させた。AIに限りなく近づきつつある最年少5冠の頭脳を混乱させた必殺芸。「(応手の)6二銀は予想してなかったので驚きました」と明かしながらも、以降は付け入る隙すら一切与えぬ手順を踏んで、即詰みに討ち取った。藤井相手の7番勝負で2勝2敗と拮抗(きっこう)したのは羽生が初めてだ。

 「第5局までは間隔が空く。それまでに調整し、皆さんに楽しんでもらえる将棋を指せるよう頑張りたいです、はい」

 今シリーズ2度目となる終局後の記念写真は、バレンタインデーにちなみショコラティエに扮した。「かっこいい制服ですね」とご機嫌のレジェンドは、節目のタイトル獲得通算100期までマジック2と迫った。歴史的瞬間へのカウントダウンが始まった。(我満 晴朗)

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