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山中V11 3センチ伸びた神の左 柔軟トレで「パンチが長く」 

[ 2016年9月17日 05:30 ]

<WBC世界バンダム級タイトルマッチ> 1R、山中慎介がアンセルモ・モレノ(手前)のボディにパンチを入れる

WBC世界バンタム級タイトルマッチ ○王者・山中慎介 7回KO 同級1位アンセルモ・モレノ●

(9月16日 エディオンアリーナ大阪)
 プロボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが16日、エディオンアリーナ大阪で行われ、WBCバンタム級王者・山中慎介(33=帝拳)は同級1位アンセルモ・モレノ(31=パナマ)に7回1分9秒TKO勝ちし、国内歴代2位タイとなる11度目の防衛に成功した。

 1年前とは全く異なる激しい打ち合い。最後は“神の左”で倒しきったが、山中の真骨頂は試合中の修正能力にあった。

 1回に左フックでダウンを奪いながら「いつも指摘される、前へ出た時のガードの甘さが出て」4回に右のカウンターでダウン。セコンドからは自身も被弾しやすい右フックを捨て、ワンツーだけで攻める指示が出た。そこに山中自身の判断で加えたのが、“当てない右のジャブ”だった。

 「当てる感じで右を出しちゃうと体重が乗ってしまう」。前がかりになりすぎないよう、左へつなげるための右に徹して倒す感覚をつかんだ。6回に左ストレートで吹っ飛ばすと、7回にも2度倒してレフェリーストップ。「モレノがきれいに倒れたのを見て、残酷だけど気持ち良かった」。完全決着と3試合ぶりのKOに留飲を下げた。

 昨年9月の初戦ではパンチが当たらない距離にいるモレノに苦戦。山中はその距離を「3センチ」と表現し、“パンチを伸ばす”努力を重ねてきた。肩甲骨周辺の柔軟性を高めるためストレッチ、両手に持った10キロのダンベルの上げ下げ、チューブを引っ張るトレーニングなどに時間をかけた。両手を下げた状態で背中越しに両肘がくっつくほど上体は柔らかくなり「長く伸びるジャブが打てるようになった。必然的に左のパンチも長くなった」と大和トレーナー。距離を詰めるための踏み込みや、わずかな隙間に打ち込むための体の傾け方にも修正を加えていた。

 リング上ではバンタム級世界最強の証となる、米専門誌リングマガジンの王者認定ベルトを贈られた。だが、もっとうれしかったのは2年ぶりの共演となった長谷川からの祝福だ。6月末から沖縄で1週間の走り込みキャンプ。かつてWBCバンタム級王座を10度防衛した先輩から「新記録を達成してほしい」と激励されていた。その長谷川が3階級制覇を達成した直後に負けるわけにはいかなかった。「自分も強い気持ちでリングに上がれた。ダブルで最高のKO勝ちができた」。感謝した王者は「2人で勝って旅行に行こうなんて話をしていたけど、ご飯ぐらいはいきたいですね」と表情をほころばせた。

 ◆山中 慎介(やまなか・しんすけ)1982年(昭57)10月11日、滋賀県湖南市生まれの33歳。南京都高(現京都広学館高)でボクシングを始め、専大では主将を務めるなどアマ通算34勝(10KO・RSC)13敗。06年1月、プロデビュー。10年6月、日本バンタム級王座獲得(防衛1)。11年11月、王座決定戦で11回TKO勝ちしてWBC世界同級王座獲得。身長1メートル70・5、リーチ1メートル75の左ボクサーパンチャー。家族は沙也乃夫人、長男・豪祐くん、長女・梨理乃ちゃん。

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2016年9月17日のニュース