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アリ氏 差別とも闘った「反逆のカリスマ」貫き通した信念

[ 2016年6月5日 05:30 ]

ローマ五輪で金メダルを獲得し、チームメートと写真を撮るアリ氏(AP)

ムハマド・アリ氏死去

 ムハマド・アリ氏は、リングの外では宗教差別、人種差別と闘った。

 1960年代に黒人公民権運動活動家のマルコムXと出会ったことでイスラム教に改宗したアリ氏は、今年の米大統領選で共和党候補の指名を確実にした実業家トランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を唱えると即反論した。「イスラム教を個人の利益追求のために利用しようとする人物」がいると強く非難。差別的な思想に対し「イスラム教徒は抵抗しなければならない」と訴えた。

 トランプ氏は、アリ氏の訃報が流れるとすぐにツイッターを更新し「真の王者で、素晴らしい男だった。世界中が悲しんでいる」と追悼。“宿敵”が素早く反応したことは、アリ氏の存在感の大きさを証明する形となった。

 アリ氏は激しい黒人差別の中で青春時代を過ごした。60年のローマ五輪で金メダルを獲得して帰国後、「金メダルをぶら下げていけば差別はないはず」とレストランに食事に出掛けた。だが、レストランは黒人と白人の座る場所が違い、黒人の自分に対する扱いは変わらなかった。金メダルを抱いて寝るほどその価値を信じていたが「もうメダルは要らない」と川に投げ捨てた。

 「敵はベトコンではなく白人だ。俺が自由、平等、正義を求めるたびに邪魔してきたからだ」。アリ氏は67年にベトナム戦争の兵役を拒否し、禁錮5年と罰金1万ドルを科される。4年後に無罪となったが、その後も“反逆のカリスマ”として、黒人差別に対する批判を続けた。

 黒人として初の米大統領となったオバマ氏は、ミシェル夫人とともに声明を発表。「彼はただただ、グレーテスト(最も偉大)だった。彼の死を悼んでいる」とした。ホワイトハウスの書斎にアリ氏のボクシングのグローブを飾っており、黒人らが差別撤廃を求めた公民権運動へのアリ氏の功績を称え「ムハマド・アリは世界を揺るがし、そのおかげで世界はより良くなった」と語った。

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