牛島和彦氏 「観客ファースト」で演出した「10・19」のドラマ「ここで敬遠して、野球ファンは…」

[ 2023年6月12日 15:54 ]

牛島和彦氏
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 スポニチなどの野球評論家を務める牛島和彦氏(62)が12日までに更新されたYouTubeチャンネル「アスリートアカデミア」にゲスト出演。今も語り継がれる「10・19」の秘話を紹介した。

 「10・19」とは、1988年(昭63)10月19日のロッテ-近鉄(川崎)ダブルヘッダー。パ・リーグのペナントレースは大詰めを迎え、近鉄が連勝すれば逆転V、それ以外なら日程を終了していた西武の優勝が決まる大一番だった。

 当時ロッテの守護神だった牛島氏は、第1試合の3-3で迎えた9回1死二塁にマウンドへ。2死となり、その年限りでの引退を決めていた梨田昌孝氏(元近鉄、日本ハムなど監督)が代打に送られた。当時の規定で、第1試合は延長戦がない。あと1死で勝てる状況になって、牛島氏は考えた。

 「オレは何をすべきだろう。(一塁空いているけど)ここで敬遠して、野球ファンは面白いかな、と。よし、ここで引退する人との勝負を楽しもう、と考えた」

 普段はスライダーを多投する牛島氏が、シュートで「真っ向勝負」を挑んだ。完全に詰まった一撃は、センターの前へ落ちるヒット。二塁から決勝点の走者がホームに転がり込んだ。

 第2試合に可能性がつながったことで、テレビ朝日は急遽、生中継を決定。全国のファンが死力を尽くした戦いに酔いしれ、引き分けで敗れた近鉄ナインの姿に涙した。

 「第2試合が始まる前、テレビが始まることになって、営業のヤツが負け投手のオレのとこに来て、“放映権料が入りました”って言ってきた。(オレのおかげだから)“ちょっとオレによこせ”って」

 最後は冗談めかした牛島氏。勝負師として以上に、観客の心をつかむプロの姿勢が、あのドラマを生んだのだった。

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