阪神ドラ1・森木「悔しさ忘れない」敗者のボール持参で入寮 昨夏高知大会決勝で球審から渡された“原点”

[ 2022年1月7日 05:30 ]

<阪神>入寮しボールを見つめる森木(球団提供)
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 阪神の新人7選手が6日、西宮市の鳴尾浜にある選手寮「虎風荘」に入寮し、ドラフト1位・森木大智投手(18=高知)は昨夏の高知大会決勝で明徳義塾に惜敗後に球審からもらったボールを持参した。高校3年間で聖地・甲子園に届かなかった悔しさを忘れず、プロの舞台でのウイニングボール量産を誓った。

 ウイニングボールの対極、いわば“ルージングボール”か。森木が寮の部屋に持参したのは1球のボールだった。少し土で汚れ、激戦の跡が残っていた。

 「夏の県大会の決勝で負けたときに球審の方から持っていきなさいと言われて…。プロでも頑張ってくれっていう思いなのかな、と。この悔しさを忘れないように」

 124球の熱投及ばず、明徳義塾に3―5で敗れた昨夏の高知大会決勝。無念の瞬間は9回裏、ネクストサークルで迎えた。最後の中飛を見届け、突っ伏して涙。整列してあいさつを終えた後、球審を務めていた高知県須崎市の郵便局員・中川裕次郎さんから決着時のボールを渡された。

 本来ならウイニングボールとして勝者に贈られるもの。特に投げ合った代木(巨人ドラフト6位)を思った。高校3年間を通して互いに高め合った好敵手。「代木君に渡してください」と一度は辞退しても、「悔しさをバネに頑張ってほしいという(中川さんの)気持ちが伝わった」と受け取った。

 あれから162日。部屋の中でも目につくところにボールを置いた。「たぶん、行き詰まった時に触ったりすると思う。これから一日一日、大切にしていきたい」。最速154キロを誇り、思い描くサクセスロード。たとえ壁に直面しても、原点のボールが奮い立たせてくれる。もちろん、プロで増やすのはウイニングボールの方だ。「できるだけ多く勝ち星を稼げるように」とうなずいた。

 近く始まる新人合同自主トレへ向けた調整も順調。「いい感じに仕上がってきている。まだまだなところはあるけど、自分のパフォーマンスを出せたらいいなと思う」。1月から始めた「自分ノート」。移動中の空港では「自分の感覚を大事にしてずっとやっていく」と入寮に際しての心構えを記した。「小さい子供たちが憧れるような大きい選手になりたい。目指すところは世界一の投手。志を高く持ってやっていきたい」。決意を新たにし、青春の日々が詰まったボールを大切に握りしめた。(石崎 祥平)

 《球友からエール》森木とは小学校時代の県選抜「高知ボーイズ」のチームメートで、今夏には明徳義塾の三塁手として対戦した梅原雅斗さん(18)が「1年目からバリバリ活躍してほしい。僕の友達にも自慢したい」とエールを送った。中学時代も明徳中と高知中に分かれて対戦し、軟式で最速150キロを誇った森木には一度も勝てなかった。高校では雪辱。「小学校の時から球が速くて、プロに行くと思った」と当時を懐かしんだ。

 《79年夏の箕島―星稜戦でも》「甲子園史上最高の試合」と語り継がれる79年夏の第61回大会3回戦の箕島―星稜でも敗者にボールが贈られた。再試合目前の延長18回に箕島が4―3で勝利。星稜のエースだった堅田外司昭さんが引き揚げる際、球審の永野元玄さんからサヨナラ打を浴びたボールを手渡された。堅田さんは社会人野球を経て03年夏から甲子園大会に審判として参加し、昨夏決勝の智弁和歌山―智弁学園での一塁塁審を最後に勇退。「ボールを見るたびに、あの試合に恥じない生き方をしようと思った」と語っている。

 ▽21年夏の高知大会決勝 高知が2点を追う8回に同点。先発の森木は8回までに120球を投じ、疲れの見えた9回に死球と2連続暴投で無死三塁を招いて降板。2番手・高橋克が3安打を浴びるなど3点の勝ち越しを許した。明徳義塾のエース左腕・代木は3失点完投で、2大会連続となる夏の甲子園出場を決めた。

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2022年1月7日のニュース