パドレス育成コーチのワーマン氏は元日本ハム国際業務担当 思い出は大谷との“海鮮丼”

[ 2021年10月4日 08:00 ]

元日本ハム国際業務担当で現在はパドレスの育成コーチを務めるキース・ワーマン氏(撮影・柳原 直之)
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 身長1メートル70、体重68キロ。屈強な男たちが集うメジャーリーグのグラウンドでひときわ小柄な男がノックバットを握っていた。パドレスで育成コーチを務めるキース・ワーマン氏だ。主に内野守備を担当している。「私はこのチームの守備の監督のようなものです。選手たちがグラウンドでやりたいことを相談して決め、紙に書き、練習の流れが良くなるようにサポートしています」。タティスやマチャドなどメジャー屈指のスター内野陣を束ねる頼もしさの一方、柔和な表情と恥ずかしそうに笑う姿はどこか人を引きつける魅力があった。

 ワーマン氏は実は日本と縁がある。14年に日本ハムで「インターン」として働き、15、16年には同球団の チーム統轄本部国際業務担当に所属。17年からパ軍傘下3Aエルパソでコーチ業を学び、18年からメジャーに昇格した異例の職歴だ。「ファイターズでの経験がなければ、今の僕はいません」。きっかけはマリナーズで内野手としてプレーしていた頃に、マ軍でスカウトなどを担当していた末吉英則氏と出会ったことだ。現役引退後に職を探していたところ「彼が僕とファイターズの関係をつないでくれました」という。感謝の念が強く「彼がいなかったらこのキャリアはなかったと思います」と感慨深げに話した。

 インターンとして日本ハムで働き始めた14年。衝撃を受けたのが当時高卒2年目の大谷(現エンゼルス)だった。特に誰よりも飛ばすフリー打撃に目を奪われた。「彼が打撃練習をしているところを見るのは、とても特別な時間でした。そして、マウンドでの圧倒的な強さと、ファンが興奮するような剛速球がありました。彼ほど球威があり、彼ほど打てる選手はいません。明らかに特別な存在です。それに加えて、素晴らしい人間性でした」。14年は札幌ドームで選手のキャッチボール相手を務めるなど練習をよくサポートしていた。選手と同じ札幌市内の寮に滞在し、試合後に大谷と食事にでかけたこともあった。「1対1で話すことができて、いくつか質問をしましたね。一緒に大きなお椀に入ったお刺身とご飯を食べました。(海鮮丼?)そうですね。一緒に寿司屋にも行ったこともありますよ。彼もお寿司が大好き。本当に新鮮で美味しかったですよ」。野球以外の話題も新鮮で興味深かった。「グラウンド外のことについて、私は何も知りませんでしたが、彼が両親に感謝していることなどを知りました。素晴らしいと思いました」。何気ない会話だったが、今でも忘れられない思い出だ。

 ワーマン氏は日本ハム在籍時にスカウト業を学ぶため、スーツ姿で神宮球場で高校野球や大学野球を視察したこともある。「ドラフトで木田さん(当時GM補佐=現 2軍総合コーチ兼投手コーチ)がクジを当ててガッツポーズをしていたのを覚えています。米国ではスーツ姿で球場で野球を見る人はいないですし、ドラフトも全く違うシステムですごく勉強になりました」。現在も日本ハムの試合結果を随時チェックしており「今季は苦戦しているようですね。ただ、フロントオフィスは素晴らしい方々ばかりなので、彼らがチームを後押しし、状況を好転させてくれると思います」と期待していた。

 将来の夢は「メジャーリーグの監督です。三塁コーチもしてみたいです」と言うワーマン氏。日本で学び、米国で道を切り開く。応援したい。(記者コラム・柳原 直之)

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2021年10月4日のニュース