DH制の導入は本当にリーグ間の格差を解消するのか

[ 2020年11月28日 12:21 ]

表彰されるソフトバンクナインを見つめる原監督ら巨人ナイン (撮影・白鳥 佳樹) 
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 ソフトバンクの2年連続でのスイープ(4連勝)日本一という結果を受け、今後の議論になりそうなのがセ・リーグのDH制導入という問題。DH制がパのパワー野球の土壌を築いている、という経緯からだ。ただ、私自身は、導入しさえすれば全てが解決する訳ではないと考えている。

 大リーグでも、DH制のないナ・リーグの弱さが指摘されることは、ここ数十年でも度々あった。例えば、オールスター戦では97年から09年まで1分けを挟んでアが12連勝。03年からは勝利リーグに本拠地開幕権が与えられただけに、ガチガチの真剣勝負とは言えないまでも、ただのお祭りではない。しかし、ワールドシリーズでは最近20年間でアの制覇が9回なのに対し、ナは11回と上回っている。

 メジャーのポストシーズンを勝ち抜くために不可欠なのが、打者を圧倒できるパワーピッチャーの存在だ。01年のダイヤモンドバックスではジョンソンとシリングが、14年のジャイアンツではバムガーナーが、19年のナショナルズではストラスバーグがフル回転し、いずれもワールドシリーズMVPを獲得。今季のドジャースならカーショーの好投がチームを勢いづけ、32年ぶりの世界一につなげた。

 逆に、「マネー・ボール」で知られるデータ重視のチームづくりで躍進した、ア・リーグ西地区のアスレチックスは対照的。最近20年間でポストシーズン進出を10度果たしながら、この間ワールドシリーズ進出はなく、9度はワイルドカードゲームか地区シリーズで敗退している。大型契約で絶対的エースを獲得するという方針はなく、自軍で育てたエースを大型契約で引き留めることもしないため、投手陣はどうしても小粒になりがち。162試合をうまくやりくりできても、短期決戦に弱い。

 DH制がパワー野球を後押しする一因にはなるかもしれないが、それよりも重要なのは、球界を背負うエースを育てようという各球団の姿勢だろう。制度のみを拙速に導入しても、大きな効果は期待できない。(記者コラム・大林 幹雄)

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2020年11月28日のニュース