会社を辞めて挑んだ都市対抗 クラブチームのハナマウイ・松尾部長兼コーチの決断

[ 2020年11月27日 12:20 ]

都市対抗野球 第5日   ハナマウイ0―1四国銀行 ( 2020年11月26日    東京D )

<都市対抗野球 四国銀行・ハナマウイ>ベンチ前でナインに話をするハナマウイ・松尾部長兼コーチ(右から3人目)=撮影・河野 光希
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 ハナマウイ(富里市)は創部2年目での初出場を勝利で飾ることはできなかった。先発の平野は8回1失点と好投したが、1球に泣いた。3回、山中に先制ソロを被弾。唯一の失点が決勝点となった。

 都市対抗を控えた10月、ハナマウイの松尾優治部長兼コーチは重い決断を下した。会社を辞める。ハナマウイではボランティアで部長、スカウト、コーチなどを務めるが、本業は他社の会社員で営業を担当している。18年12月の就任以来、業務後の時間と休日はすべてチームに捧げてきた。創部2年目の快進撃で出場を勝ち取った晴れ舞台。直前のオープン戦も重要で、勝ち進めば試合間隔は詰まる。スカウトも兼ねる自らが声をかけ、関係者に頭を下げて迎えた選手は息子のような存在だ。大事な時期にチームを仕事で離れるわけにはいかなかった。「彼らが東京ドームで戦う姿を目に焼き付けたい」。悩んだ末、務め先に辞表を出した。

 憧れの舞台、東京ドームで迎えた四国銀行との一戦。1年前の都市対抗決勝を観戦した記憶がよみがえった。同じ南関東地区のJFE東日本が優勝し、選手に呼びかけた。「JFEは来年、推薦出場で予選免除だ。代表になるチャンスだぞ」。自らが務めるスカウトでも売り文句にした。「来年、都市対抗を目指します」と声をかけ、新卒選手9人が加わった。

 四国銀行は強敵だった。右腕・菊池に苦戦し、6回まで二塁すら踏めなかった。1点を追う7回、初めてのチャンスを迎えた。2死二塁で打者は7番・大友。三塁コーチを務める松尾は「連打は難しい。ワンチャンスにかけよう」と腹をくくった。前進していた左翼手の前に痛烈な打球が飛んだ。タイミングはアウトであることを承知で腕を回した。左翼手の送球は逸れず、本塁封殺となった。
 最後まであと一本が出ず、0―1で試合終了。「選手に勝たせてあげたかった…」と肩を落としたが、通算19回の出場を誇る相手に一歩も引かない戦いを見せた。

 夢の舞台が終わっても、チームを優先する。11月、12月はオープン戦を行った大学野球部を回り、お礼のあいさつをするという。「色々な人の協力で都市対抗に来ることができた。その先(自らの仕事)はなんとかなると思っています」。野球に熱い情熱を注ぐ男は穏やかに笑った。

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2020年11月27日のニュース