四国銀行13年ぶり1勝 脳腫瘍から復活した主将・柴田 「奇跡」のバックホームで救った

[ 2020年11月27日 05:30 ]

都市対抗野球第5日・1回戦   四国銀行1-0ハナマウイ ( 2020年11月26日    東京D )

<四国銀行・ハナマウイ>ハナマウイに勝利し喜ぶ山中(左端)、柴田(右端)ら四国銀行ナイン(撮影・沢田 明徳)
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 第91回都市対抗野球1回戦3試合が行われ、四国銀行(高知市)が初出場のハナマウイ(富里市)を1―0で破り、13年ぶりに初戦を突破した。悪性脳腫瘍から復帰を果たした主将の柴田一路(いちろ)外野手(26)が2安打を放つなど攻守でチームをけん引。エースの菊池大樹投手(27)が今大会完封一番乗りを果たした。Honda熊本(大津町)は日本通運(さいたま市)に延長10回タイブレークの末、6―5で逆転サヨナラ勝ちした。

 不屈の男が、13年ぶりとなる初戦突破の原動力だった。攻守で活躍した柴田は「楽しんで野球をやれたと思います」と振り返り、東京ドームのグラウンドに立てたことを「奇跡です」と表現した。

 昨年12月25日。勤務後に意識を失い、高知県内の病院に緊急搬送された。脳の左側に腫瘍があることが判明し、3月中旬から2週間の検査入院。5月13日に京大医学部付属病院で、実に9時間に及ぶ覚醒下腫瘍摘出手術を受けた。

 確定診断は悪性脳腫瘍。手術は成功したが、腫瘍が言語野を侵食しており、術後1カ月は言葉を発することはできなかった。それでも地道なトレーニングと驚異的な回復力で7月6日にチームに再合流。8月のオープン戦で「これなら大丈夫という感じだった」と手応えをつかみ、四国地区2次予選に挑んだ。

 ヘルメットのフェースガード以外は手術の影響を感じさせる場面はなかった。2回に外角の142キロ直球を逆らわずに右前に運ぶなど2安打。守備でも1―0の7回2死二塁で左前打を素早く処理し、本塁へワンバウンド送球。二塁走者を刺し、同点を許さなかった。「俯瞰(ふかん)して野球を見られるようになった。そういう面では病気になったことが、ありがたいと思う」。究極のプラス思考で戦っている。

 次戦に勝てば、チーム初の1大会2勝となる。「目の前の試合を一戦一戦、大事に戦っていくだけ。常にチャレンジャーの気持ちでやっている」。柴田は野球ができる喜びを胸に、最高の舞台で挑戦を続ける。(桜井 克也)

 ◆柴田 一路(しばた・いちろ)1994年(平6)11月18日生まれ、大阪府出身の26歳。春日丘(大阪)では高校通算25本塁打。高知大を経て、入社4年目。1メートル69、68キロ。右投げ右打ち。

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