阪神・原口、奇跡の球宴弾 9回代打で虎捕手47年ぶり、「感謝の気持ち」勇気届ける敢闘賞

[ 2019年7月13日 05:30 ]

マイナビオールスターゲーム2019第1戦   全セ3-6全パ ( 2019年7月12日    東京D )

9回2死一塁、代打・原口は2ランを放ち、スタンドに手を振る(撮影・森沢裕)
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 1月の大腸がん手術から復活を果たし3年ぶりの球宴出場を果たした阪神の原口文仁捕手(27)が、初本塁打を放った。9回に代打出場しオリックス・山本から左中間に2ランを運んだ。阪神の捕手が球宴で本塁打を記録するのは1972年田淵幸一以来、47年ぶり。13日の第2戦は甲子園。不死鳥の男が本拠でさらなる活躍を見せる。

 衝撃度は間違いなくMVP級だった。原口が9回2死一塁から梅野の代打で出場。山本と対峙(たいじ)し1ボール1ストライクから148キロカットボールを仕留め、左中間席に突き刺した。

 「あまり良い成績ではない中で最高の舞台を作ってくれて感謝の気持ちでいっぱい。支えてくれた方々に少しでも恩返しできたらと思っていた。そういう意味では最高の結果だったかなと思います」

 あまりに劇的すぎる一発に東京ドームが揺れた。ダイヤモンド一周後、ヘルメットを脱いで一礼。「大きな歓声をいただいたので“ありがとうございます”という意味を込めて」。初出場だった16年から通算3打席目で飛び出した、自身初の本塁打だった。

 この一発で「敢闘選手賞」を受賞。照明が落とされ観客のスマートフォンのライトだけで照らされた特別な空間の中での表彰式で名前が呼ばれると、この日一番の歓声を浴びた。

 結果的には最後まで“主役”だった。試合前の出場選手紹介でも最大の歓声を受けた。1月の大腸がん手術から復活し6月4日の1軍復帰から1カ月余りで、この舞台に立っている事実にファンの心が震えた証だ。他球団の選手も思いは同じ。「テッチャン(ヤクルト・山田)やセイヤ(広島・鈴木)も声をかけてくれて。本当にありがたい。そういう人たちへの感謝の気持ちも持ってプレーしないといけない」。オールスターという舞台で、新たな温かみに触れた。

 感慨深い理由はもう1つあった。「小さい頃ジャイアンツが好きですごく見に行っていた。一塁側ベンチからグラウンドに出ていくと、昔を思い出すような、そういう思いがこみ上げてきましたね」。少年時代、父・秀一さんに手を引かれ何度も連れて来てもらった場所。シーズンでは三塁側に陣取るだけに今宵は特別だった。

 13日の第2戦は甲子園が舞台。「本拠地でオールスターに出られるなんて、なかなかない。結果が出れば最高ですけど、元気ハツラツとプレーしている姿を見ていただければ」。今季の原口には「ミラクル」という言葉がよく似合う。虎党に、そして全ての野球ファンに勇姿とともに「さらなる奇跡」を届ける。(巻木 周平)

 ≪阪神勢9年ぶり弾≫原口(神)が9回、代打で球宴1号本塁打。阪神選手の本塁打は10年第2戦のブラゼル以来9年ぶりで、日本人選手では08年第1戦の金本以来11年ぶり。生え抜きでは00年第3戦の新庄と坪井以来19年ぶりとなった。捕手で選出された阪神選手では72年第1戦の田淵以来47年ぶり2人目(4本目)だ。

 ≪代打弾は35人目≫代打弾は15年第2戦の森友(西)以来4年ぶり35人目、38本目。全セでは07年第2戦のラミレス(ヤ)以来12年ぶり。阪神では54年(1)藤村富、63年(2)藤井、70年(3)遠井、80年(1)岡田、80年(3)掛布に続く39年ぶり6人目(カッコの数字は回戦数)。球団通算6本は近鉄と並ぶ最多タイだ。

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2019年7月13日のニュース