メジャー投手の“工夫”は不文律 そもそも滑るボールが問題だが…

[ 2019年5月11日 09:30 ]

マリナーズの菊池雄星投手
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 マリナーズ・菊池雄星投手が8日のヤンキース戦(ヤンキースタジアム)で素晴らしい投球で2勝目を挙げた裏で、ちょっとした騒動があった。帽子のつばに付着した茶色い物体が不自然、とSNSを中心に話題が広がった。松ヤニではないか、と物議を醸した。

 もっとも対戦相手のヤ軍も、大リーグ機構も、この話題を不問とした。大リーグではシェービングクリームや整髪ジェル、歯磨き粉なり、オレンジジュースなり、松ヤニなり、滑り止めとして何らかの工夫を凝らすのは暗黙の了解として不文律になっている。

 松ヤニは禁止が明文化され、つい最近の14年にもヤ軍のマイケル・ピネダ投手が首筋にぬっていて、10試合の出場停止処分を受けたことがある。それさえも、試合中に敵将が確認するよう球審にうながしたため逃げ隠れができず、「もっとうまいことやれよ」という警告の意味が強かった。

 メジャーで長く活躍する有名投手も、グラブや帽子の裏、スパイクのベロなどどこかにそれを忍ばせる。ボールの変化を大きくするためにヤスリやベルトのバックルでボールを傷つけるエメリーボールは取り締まりの対象だが、滑り止めまでなら許容範囲のようだ。

 禁止されていることが、不文律なんておかしいじゃないか、という声も理解はできる。ただ滑り止めをせずに投球した場合、球が抜けてしまい打者の顔を襲うビーンボールにつながりかねない。最悪の場合、選手生命を左右しかねない。

 ようはそんなに滑るボールが問題なのだろう。日本投手がWBCのたびに苦しむメジャー公式球。いっそのこと、滑りにくく優秀な日本社製のボールに変えてみては、とも思う。多くの球界関係者が、日本投手がメジャー移籍後に肘を故障しがちなのは、滑りやすいボールの影響も大きいとも指摘する。少しでもグリップを良くしようと指先に力が入り、じん帯にかかるストレスが増す、と。

 ただ、そこはばく大な利権も絡み、現実的には実現不可能だろう。それこそ米国企業の利権を守るため、ドナルド・トランプ大統領の機嫌を損ね、膨大な関税でも設けられるようではたまったものではない。(記者コラム・後藤 茂樹)

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