「甲子園を意識しろ」 甲子園に最も近くて遠い球児たちも刺激 甲子園塾2日目

[ 2018年11月17日 18:44 ]

山下智茂塾長の話を聞く西宮東高の選手と受講者たち
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 日本高校野球連盟(高野連)が若手指導者育成に開催する講習会「高校野球・甲子園塾」2日目は17日、西宮市の西宮東高グラウンドで実技編に入り、全国から集まった若手指導者27人が熱心に聞き入った。

 甲子園塾の狙いはもちろん、全国の指導者(監督や部長)育成なのだが、今回、モデル校となった西宮東の東佑樹監督や30人の部員たちも意気込んでいた。

 同校は西宮市古川町にあり、1963(昭和38)年開校の市立高校だ。甲子園球場から最も近い高校として知られる。直線距離なら1キロ足らず。徒歩10分少しで着く。

 だが、これまで甲子園に出場したことはなく「近くて遠い甲子園」だった。

 同校OBで、就任4年目の東監督は「ずっと、近くて遠い、と言われ続けてきました。何か刺激をもらえたら……と思っています」と話していた。

 右スリークォーターのエース、茶谷哲兵(2年)を擁し、今年の夏は東兵庫大会ベスト8、新チームとなった今秋はベスト16と、ある程度の結果は残している。壁を破るきっかけが欲しかったと言えるだろう。

 だから、今回、山下智茂塾長(73=元日本高野連技術・振興委員会副委員長、星稜名誉監督)から「常に甲子園を意識しながら、言葉に出しながら練習をする」という姿勢は相当に参考になった。「球際の強さが勝敗を分ける」というノックの際、「それで明石商に勝てるのか!」「報徳との決勝。2死満塁や」と声をかけながら打つ姿に、部員たちの目の色も変わった。

 山下塾長はよく野球を人生に重ね合わせる。「キャッチボールの中に人生がある」と、この日も話した。「相手の捕りやすい胸元に投げる、という思いやり」「悪い球を投げたらゴメンというマナー」「そらしたら拾いにいくというルール」「いい球が来たらナイスボールとたたえるリスペクト」……。

 「ノックは対話」という信条がある。例年通り、選手と1対1で向き合う、通称「けんかノック」も披露し、終われば選手の顔についた泥をタオルでぬぐい、抱き合った。

 「いつまでも現役選手で野球を続けられるわけではない。野球の技術は20年もたてば忘れる。それより人格や人間性をつくることの方が大切だと僕は思うなあ」

 東監督は「この子たちにとっては、この経験が宝になります」と話した。「もちろん、甲子園を目指してがんばります。ただ、それ以上に、山下先生にかわいがってもらえた、この経験が生涯にわたって生きてくる。そう感じました」

 他に、特別講師の元北陽(現関大北陽)監督の新納弘治・日本高野連技術・振興委員(57)からは捕手やバントの基本動作、五島卓道・木更津総合監督(64)から投手のクイック投法や打撃の基本姿勢を伝えられた。

 受講生の若手指導者たちは熱心にメモを取り、またはスマートフォンやタブレットで動画を撮影しながら聞き入っていた。

 講習会は18日が最終日。同じく西宮東高グラウンドで走塁の実践があり、最後は受講生がノックの実践練習を行い、修了証が手渡される。 (内田 雅也)

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