やはりしっくり来る「捕手・阿部」注目したい「初球の入り方」

[ 2016年1月11日 08:00 ]

巨人の阿部

 昨年10月20日、神宮球場の一塁側スタンドで、ある野球解説を聞いた。東都大学野球秋季リーグ戦で、亜大が中大を7―1で下した一戦だった。

 「あ~、また同じ配球パターンで打たれたよ」 
 「この打者のスイングを見たら、外野はもう少し深く守った方がいいのに」
 「変化球が外れたでしょ。このカウントになったら、次の球は俺なら○○を狙うけどな」

 解説者は、中大OBの巨人・阿部慎之助だった。シーズン全日程が終了し、母校の応援に駆けつけていた。

 楽しい解説を聞きながら、ふと気がついた。野球の見方が、常に「捕手目線」だったことだ。打者の反応を見て次の球は何を要求するのか、野手のポジショニングは大丈夫か、風向きはどうなっているか…。すべてマスク越しの景色が前提となっていた。

 昨年、阿部は一塁手として開幕を迎えた。心身の負担を減らし、打撃に専念するためのコンバートだった。だが、チーム事情もあって、捕手として26試合に出場した。肉体的、精神的に捕手の方がストレスが大きいのは明らかだが、やはり、阿部には捕手が似合う。

 記者は06年から4年間、巨人担当をしていた。07年からリーグ3連覇をした当時、阿部に「勝ち続ける中で、捕手として成長できた点はどこか?」という質問をしたことがある。返ってきた答えは「初球の入り方が、少しはうまくなってきたかな」だった。

 阿部は現在、温暖な地・グアムで体づくりに励むが、2月のキャンプではマスクを被る姿が見られるはずだ。プロ16年目を迎える今季は、再び捕手として勝負することが増えるだろう。一塁から見た景色は、必ず捕手にも生きると思う。

 3月に37歳となるが、まだまだ老け込む年ではない。2016年の巨人戦は、阿部捕手の「初球の入り方」に注目したい。(川島 毅洋)

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2016年1月11日のニュース