接戦の緊張感どこに…伝統の早慶戦で感じた優勝監督と“同じ思い”

[ 2015年11月1日 19:41 ]

<早大・慶大>高橋広監督を胴上げする早大ナイン

東京六大学秋季リーグ戦最終週最終日 早大2―0慶大

(11月1日 神宮)
 90周年を迎えた東京六大学野球秋季リーグは早大が慶大に連勝して、並んでいた法大の優勝記録を抜き45度目の優勝を果たした。慶大が連勝すれば明大とプレーオフに持ち込める大一番も、自慢の打線が不発で僅差の試合を落とした。

 僅差の試合と書いたが、観戦している身には手に汗握る大一番とは映らなかった。なぜか?その原因を自身に問うと、答えは笑顔にたどりつく。打席で、凡打しても笑顔を見せる選手が多いのだ。試合前にはお互いのフリー打撃中に、早慶の選手同士が笑顔で雑談。これから大一番を迎える緊張感が伝わってこない。試合する同士が仲良くてどうする?こんな考えは古いのか?と思っていたら、意外なところから同じ思いの声が出た。

 ある意味、当事者の一人、早大の高橋広監督(60)だった。優勝会見が終わり、記者に囲まれた中、雑談のように話し始めた。

 「今の選手は仲が良すぎるね。別に悪いことじゃないんだけど、一歩グラウンドに入ったら違うと思うんだ。昔の島岡さん(元明大監督)なんか、早稲田と書いた紙を選手に踏ませたというじゃない。うちの道端と慶応の小笠原は智弁和歌山のチームメートでしょ。打席でも捕手同士だから話しちゃうよね」

 確かに、早慶の捕手は高校のチームメート。打席に入れば、笑顔で一言二言会話を交わす。明大・高山、法大・畔上、立大・鈴木、慶大・横尾の主力は日大三の同期。そのへんもわかった上で高橋監督は「六大学は緩いよね。高校野球のほうがよほどぴりっとしてる」と厳しい。30年以上、鳴門工の監督を務め、負ければ終わりの戦いを続けてきた人だからこそ出た発言。「だから、来シーズンからウチはグラウンドに出たら相手と笑顔で話すとかしないチームにしますよ。もちろんグラウンド外では仲良しでいいけど」と、神宮での仲良し禁止令を出す。

 より緊張感のあるスリリングな六大学へ。高橋監督の考えには大賛成。優勝のかかった早慶戦ですら満員にならない今の六大学に新風を吹かせて欲しい。(特別編集員 落合 紳哉)

続きを表示

2015年11月1日のニュース